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III MARPOL73/78条約

 

(1) 採択の経緯

1960年代に入り、石油の大量輸送手段としてタンカーの需要が高まるとともに、運送コスト等の問題から大型化が進んだ。しかしながら、こうした現象は、一度事故が発生すると大規模な海洋汚染事故を招く結果ともなり、1967年のトリーキャニオン号座礁事故や1976年のアルゴマーチャント号座礁事故は甚大な海洋汚染の被害をもたらすに至った。

こうした背景を踏まえ、船舶からの油、有害液体物質及び廃棄物の排出や船舶の構造・設備についての規制により海洋の汚染を防止することを目的とした 「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約」(MARPOL73条約)が採択されたが、ばら積みされる有害液体物質に係る規制の実施について一部問題があり発効するに至らなかったため、これに一定の猶予期間を設けるなどMARPOL73条約に修正・迫加したMARPOL73/78条約が採択された。

(2) 条約の内容

本条約は、船舶からの油、有害液体物質及び廃棄物の排出を規制するものであるが、具体的には、次のとおり各附属書において規制されている。

1] 附属書I 油に関する規則

2] 附属書II ばら積みの有害液体物質に関する規則

3] 附属書III 容器等に収納されて運送される有害物質に関する規則

4] 附属書IV 汚水に関する規則

5] 附属書V 廃物に関する規則

これらの附属書のうち、附属書I及びIIはMARPOL73/78条約を批准する以上、必ず批准しなければならないこととされている一方、附属書III、IV及びVは選択附属書と呼ばれ、批准の際の留保が可能となっている。このため、選択附属書の批准状況は表3-1のとおり附属書I及びIIの場合と異なっている。

本条約は、発効要件 (批准国数が15ヵ国以上で、批准国の商船船腹量の合計が世界の50%以上)を満たした後、12ヵ月で発効することとなっており、附属書I及びIIは1983年10月2日(附属書IIは1987年4月6日から実施)から、附属書Vは1988年12月31日から、また、附属書IIIは1992年7月1日から、それぞれ発効している。なお、附属書IVは批准回数の要件を満たしているものの船腹量が不足しているため、未だ発効していない。

その他、附属書VIとして、船舶からの排出ガスによる大気汚染防止のための新条約が採択されており、1998年3月1日現在、批准国は2ヵ国のみである。(発効要件は他の附属書と同様、批准国数が15ヵ国以上で、批准国の商船船腹量の合計が世界の50%以上)

 

 

 

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