このことから、廃油ボールによる海洋汚染の防止については、外国船舶も含めた関係者の遵法精神の高揚による違法排出の防止が強く望まれるところである。
(3) 海上漂流物による海洋汚染の問題
近年、地球環境問題の一つとして海洋環境の保護、保全の重要性が唱えられているが、対策を講じるべき汚染源の一つに漂流ゴミがあげられている。特に、ビニールや発泡スチロール等のプラスチック類は、海鳥やアザラシなどの海獣類に影響を与えるといわれており、また、漂流ゴミの発生過程は、陸上で捨てられたものが河川を通じて海上に流出するもの、沿岸又は船舶から海上に捨てられたものなどが考えられている。
海上保安庁では、これらの海上漂流物の実態を把握するため、平成3年から定期的に目視による調査を実施している。
平成10年の調査結果によれば、確認された海上漂流物の約85%をビニールや発泡スチロール等のプラスチック類が占めており、また、確認の総数は、前年に比べ増加している。
これらの漂流物は、船舶等からの不法投棄ばかりでなく、心ない一般市民による不法投棄によるものもあると考えられることから、海洋環境保全の観点から、一般市民を含む関係者のモラルや遵法精神の高揚に努め、廃棄物の適正処理について指導を強化していく必要がある。
2 海洋環境保全の監視取締り
(1) 海洋環境保全のための監視取締り
海上保安庁では、全国に11の管区海上保安本部、118の海上保安部署、14の航空基地を配置し、355隻の巡視船艇、70機の航空機により、我が国周辺海域の海洋汚染の監視取締りを行い、海洋環境の保全に努めている。特に、東京湾、大阪湾を含む瀬戸内海等の船舶がふくそうする海域、タンカールート海域等の海洋汚染の発生する可能性の高い海域には航空機及びへリコプター搭載型巡視船等を重点的に配備し、海空から広域的な監視取締りにあたっている。