また、静止気象衛星「ひまわり」は、米国の極軌道衛星「NOAA」とともに海面水温の観測も行っています。気象庁ではこれらの観測データに加えて、次のような方法で内外の海洋観測データを即時的に収集しています(図1に気象庁が収集する海洋観測データの流れを示します。)
1]国内の商船・漁船等により観測されたデータが、漁業無線局、インマルサットを経由して気象庁に送られる。
2]国外の気象・海洋機関で収集されたデータが、気象・海洋データの国際交換のための専用通信回線である全球通信システム(GTS)を経由して気象庁に送られる。
3]海上保安庁、水産庁、防衛庁、都道府県の水産試験場等の国内関係機関の観測データが、専用回線や電話ファックス、郵送、電子メール等により気象庁に送られる。
気象庁では、収集した海洋観測データを解析し、さまざまな海洋情報を作成しています。海面水温については、北西太平洋域、太平洋全域および全球を対象に旬および月平均の実況解析を行っています。表層水温については、北西太平洋域と太平洋域を対象に旬毎あるいは月毎の解析を、海流については、北西太平洋域を対象とした旬毎の解析を行っています。また、北西太平洋域を対象として旬平均および月平均の海面水温と海流の予報も行っています。
海洋観測データ、特に海洋内部の観測データは、時間的にも空間的にも連続したものが少ないのでスーパーコンピュータを用いた海洋大循環モデルに実際の観測データを組み合わせること(同化)により実際には観測値がない海域についても海洋の状態を合理的かつ精度よく推定する方法が注目されています。この方法は「海洋データ同化」と呼ばれ、気象庁は精度のよい海況解析・予測情報の作成・提供のために海洋データ同化システムの開発を行っています。
こうして作成された海洋情報は、日々の天気図と同じように洋上の船舶に向けた無線ファックス「気象庁第一気象無線模写通報(JMH)」(表に無線ファックス放送している海洋情報を示すとともに、図2に海面水温・海流予想図と海面水温偏差予想図・予報文を示します)で放送しているとともに、各種の海況図や時系列図等の資料を総合的に取りまとめた印刷物「気象庁海洋月報」により内外の関係機関に提供しています。
気象庁では、こうした定期的な情報発表のほか、黒潮の流路の変化等、海況に大きな変化が認められた場合には必要に応じて随時、迅速にこれらの情報を発表しています。こうした海洋情報は、気象予報の精度向上、気候、海洋変動の監視や海運・水産業等の諸産業分野に関連する情報として役立てられています。
おわりに
海洋の「現場」での観測データの収集は、一般船舶の協力なくしては成り立たないものとなっています。関係者の方々には今後とも一層のご協力をお願いします。
訂正=「海と安全」九月号、一三ぺージの上から三段目、日高丸のSOS発信時刻が、22:39とありますが、23:32と訂正してお詫びします。