これらの試験結果に基づいて、水中管方式が膨張オイルフェンスに追加されて、フェンス内部とフェンスの下部の水との間の熱伝達が良好になった。空気は取り入れられて、この管の内部を循環する。オイルフェンスの内部温度が計測され、下部の冷水との熱伝達により内部温度は20〜30%減少した。外部のオイルフェンスの耐火布はこの熱の減少でかなり劣化が緩和された。これらの試験は、海水で冷却すればオイルフェンスの耐久期間が延びる可能性を示唆している。
3 火災包囲用オイルフェンスについてのEXXON VALDEZ号の漏油事故による教訓
Prince William SoundにおけるEXXON VALDEZ号の漏油事故の間にかなりの新しい知識、情報が集積し記録された。この情報は、Exxon Production Research Companyが発行した報告書に公表されている。
(1) 曳航用オイルフェンス
油を集めるために漁船が多数の連結オイルフェンスを曳航して“U”型とする。オイルフェンスに油が一杯になれば、両端をお互いに寄せ合うようにして油の回収はスキマーで行う。曳航されるオイルフェンスの長さは一般に460〜600mであった。
Goodyearオイルフェンスの場合は、その先端でNavy(Marco Mk V)スキマーとともに“Y”字型に引かれる時の操業が最善であることが判明した。オイルフェンスの開き部に一本のロープを結んで、“V”型を維持する。最初91mの長さのオイルフェンスが使用されたが、後には次第に短くなって46mとなり、操縦性は向上した。
(2) オイルフェンスの破損
オイルフェンスの破損の半分以上が回収時に起きたと推定された。
この他の問題としては:
・ 浮き室が漏れてオイルフェンスが沈没
・ 波や海流の力でアンカー点で引き裂かれた
・ ごみ片で浮き部品がパンク
・ 取扱い(回収)中にバラスト鎖が布から引き裂かれる
・ 手荒い取扱いで接手が破損
(3) オイルフェンスの接手
相性の悪い接手は問題を起こした。しかしASTM基準接手でさえ取扱いやフックアップが難しく、これは特に海上にあるオイルフェンスが引張られている時に起こる。保持ピンの挿入は素手で行わなければならず、冷たい海水中では難しい。
さらに、オイルフェンスが冷たい海中に水没している時は、ボールロック端部のアルミとステンレス部品の膨張係数が異なるため、接手は開きにくい。
EXXON VALDEZ号の漏油事故の際には全体サイズが46〜200cmのオイルフェンスが使用された。担当責任者は18インチの小さいオイルフェンスの適用例を報告しているが、一般には、81〜107cmのオイルフェンスが必要になった。時には、小さいオイルフェンスでは速度を充分に減速できないので、曳航漁船の速度をスローダウンするために、大型のオイルフェンスが使用されたこともあった。