(3) 誘導フェンスの滞油性能7)、8)、9)
外洋に大量流出した油が港湾・漁場・リゾート等の沿岸の保全水域に漂着するのを防ぐために、沿岸沖合において油の流れを制御し、流向を転換する方法が用いられている。本項は、現有のB型固形式オイルフェンスを流れに対して斜めに展張して流出油の流向を制御する方法を調査した結果の一部を抜粋した。
1) 制御方法
オイルフェンスを流れに対して斜めに展張したときの形状と流出油の制御状況には図1-3-20のような場合がある。図においてフェンスは、流れに対して展張位置PQに張られている。流れとPQのなす角を誘導角と呼び、また、フェンスの長さをLとする。図(a)はフェンスに弛みのない場合で、流出油は良く制御されフェンス面に沿って流れ去って行く。しかし、流れがある速度(以下、「制御可能速度」という。)を越えると弛みのない場合でもフェンスのスカートの一部が浮上り、図(b)のように漏油が発生する。図(c)は展張間隔PQに比べてフェンスの長さしL長い場合で、弛みができてフェンスの形状は、いわゆる、「J形」となり、弛みの部分から漏油が発生する。
2) 制御可能速度
低粘度・高粘度2種の試験油(100cSt、1,500cSt 20℃)について、初期誘導角、初期開口比、フェンスの形状(J型になるか、ならないか)と制御可能速度Vとの関係、フェンスにかかる張力Tp.TQ等を実験により調査した。
実験に用いたオイルフェンスは長さ20mである。実験の結果を表1-3-7に示す。
実験の結果得られた制御可能速度と初期誘導角度、波浪、粘度の関係を初期開口比毎にまとめると以下のとおりである。
1] 全般的に高粘度油のほうが低粘度油よりも制御可能速度が0.1m/s程度高い。
2] 初期開口比0.9では誘導角によって制御可能速度はあまり変わらない。