II-1-3 オイルフェンスの性能調査
オイルフェンスの性能調査については、現在、我が国に油の投入が可能で、かつ、流速を自由に変化させることができる水槽が所在しないことから、油を用いた試験ができなかった。
このため、海上災害防止センター等各機関が過去においてオイルフェンスの性能、使用方法等に関する調査研究をしており、これら調査研究を整理するととともに、海外の文献等を調査し、総合的に取りまとめることとした。
1 オイルフェンスの構成
国内で市販されているオイルフェンスの型式は、A型、B型、C型及びD型で海上に流出した油の囲い込み、拡散防止及び誘導等に使用するタイプとタンカーの着桟荷役時に使用する浮沈式オイルフェンスに分けられる。これらのオイルフェンスは、固型式(発泡材を充填したもの)と充気式(空気、炭酸ガス)の2種類に大別できるがいずれのオイルフェンスとも次の5つの構成から成り立っている。
・ 浮体部
・ 乾舷部
・ スカート部
・ テンションベルト部(張力部材)
・ 重錘部
また、補助部材として次の部材がある。
・ 端部接続ファスナー
・ アンカー用ベルト
・ シャックル
・ 補強ベルト等
固型式及び充気式オイルフェンスの標準的な構成例を図1-3-1及び図1-3-2に示す。
(1) 主たる部材の定義
1) 浮体部:海面上にオイルフェンスを浮かばせるための浮体
浮体部は、オイルフェンスの全重量を受け持ち、かつ乾舷及び吃水を維持する浮力を有すること。
浮力方式は、発砲スチロール等の海水より比重の小さい固体を耐油・耐水性の布地を袋状にして、その中に充填する固型式と耐油・耐水性の布地で製作された気室に空気あるいは炭酸ガスを充填する充気式(膨張式)のものがある。
浮体長さは、波の追従性が良好となる長さとし、浮体と浮体の間は柔軟性のある布地等で接続する。
また、浮体は、潮流により浮体近辺に渦流を生じない形状とする。
2) スカート部:浮体下部に取付けられたオイルフェンス下部
スカート部は、流出油の包囲、滞油、誘導等の使用状況によりその役割を受け持つ。オイルフェンスの張力は、潮流速度とスカート面積に比例するので必要以上にスカート長さを深くするとテンションベルト部やスカート部に大きな荷重を受けることになり、スカート部等の破断、切断の要因となる。