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表1 トリアージのプロトコール

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(New York State Department of Health, MCI Manualを一部改変)

 

4) 災害に強い病院作りと災害訓練

次に病院の脆弱性を考えなければならない。我が国の災害シミュレーションでは常に病院が無傷という想定である。しかし病院は火事が起こりやすく、心電図、脳波などの機器や、ポータブルレントゲンなど、どれも車付きで災害時には凶器にさえなってしまう。その上、水道、ガス、電話などのライフラインが破壊されると病院の機能がなりたたない。

たとえば、米国ダラス市では、市庁舎を中心に放射状に7つの地域に分けて、各地域に中心部の基幹病院、周辺部の副基幹病院を設け、地域内の各病院は自分のところが壊れた場合には、そこで働いていた医師、看護婦はどこの病院に行って働くかなど、地域の医療体制全体の流れが細かく決められている。手術機材もキット化されて、何十セットも蓄えられ、水がなくても手術は可能である。ところが我が国では、各病院1つずつが独立しているため病院間の協力・協調のもとで災害医療にあたることが難しい。我が国における将来の災害医療体制を考える場合、自治体の枠を超えた災害医療体制を作ることが必要と思われる。この体制下で、各病院は大災害時対応計画マニュアルをつくり、年に最低一回は地震を想定した訓練を行うことである。訓練を伴わない防災計画は意味を持たない。

 

5) 病院間の連携はどう確保するのか

今回の災害では、病院間、消防本部、地方自治体での情報ネットワーク体制が整っていなかったために、それぞれの病院の被災の状況、負傷者の受け入れ状況等を把握することができなかった。このため、量的、質的に対処できない負傷者をどこの病院に運んだらよいのかなど様々な混乱をきたした。

また、ほとんどの施設が非常用として通常の電話回線を考えていたことも情報の把握ができなかった一つの要因であった。被災地の医療情報は、災害医療チームの派遣や被災地の医療を確保するため早期に必要となる。この医療情報を収穫するための手段を確保するため、NTTにも災害特別回線を設置し、緊急時の使用に備えるとともに、病院の通信回路を耐震化し、無線送受信装置を併設する等が必要となる。また情報は、2次医療圏のひとつの地域として、医師会、病院や保健所などが情報を共有化できるシステム作りも必要になる。インターネットなどのコンピューターネットワークが現状では最善の策であろう。

 

 

 

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