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はしがき

 

平成10年8月末の福島県西郷村の救護施設「からまつ荘」や平成11年6月末の広島県広島市、呉市等で発生した土砂災害にみられますように、我が国では毎年のように豪雨に伴う土砂災害が発生し、貴重な人命・財産が失われています。

大雨のときに特に恐いのは、突然発生する崖・山くずれ、土石流などの土砂災害です。

1982年の長崎豪雨、1983年の山陰豪雨、1993年の鹿児島豪雨では100名を超える多数の方が亡くなりましたが、その9割は土砂災害によるものです。

土砂災害は、「前兆が現れるのはまれ」、「発生が突発的」などの理由から、市町村、消防本部等の職員が警戒巡視や避難の勧告・指示などのタイミングを計る上で決め手に欠けていたのが実状です。そのため、雨のシーズンになると頭を抱える防災関係者は多いものと思います。

本研究開発事業は、関係者のそのような悩みを解決するシステムを開発することを目的に平成10年度に引き続き実施したものであります。本事業により開発した「雨量に基づく土砂災害危険予測システム―広域運用システム―」は、1]土砂災害対策のための危機管理機能、2]近隣市町村等の観測雨量データの交換・活用機能、3]再現シミュレーション機能等を備えています。

本システムを用いることにより、豪雨域や河川上流域の市町村、消防本部及び関係機関・団体等の観測雨量データを活用して、管内だけでなく広域にわたり土砂災害危険の接近状況をリアルタイムで把握できるようになることから、より的確な防災活動が可能となります。また、各地の豪雨災害時の雨量データから当時の土砂災害の接近状況を時間を追って再現させる機能(再現シミュレーション機能)を用いれば、防災活動の問題点の分析や実戦的な意思決定訓練が行えます。

土砂災害危険を抱える市町村、消防本部等において本システムを積極的にご活用いただき、土砂災害から生命・財産を守るために役立てていただければ幸いです。

 

平成12年3月

財団法人 消防科学総合センター

理事長 藤田康夫

 

 

 

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