<音響反射板使用時の照明による演出の可能性>
通常、音響反射板は器楽であれ声楽であれ、生音を聴かせることを主眼とした音楽のための劇場設備であり、照明は特に色付けを施さず演奏者にとっても、鑑賞者にとっても必要な明るさを確保すればそれで十分であるという観点で考えられる傾向にある。
生音による音響重視の点で、響きを逃がさないために客席部分も含めて一つの箱をなす構造のため、照明は舞台天井部分のダウンライトと前明り(フロント、シーリング)によって構成されことが一般的である。
いわゆるクラッシックの演奏会では演奏規模の大小によって照明の当て方に工夫はあるものの(*1)ほとんど生明りで処理できるが、エンターテインメントの趣きをもつ演奏会では響きを疎かにしない範囲で、劇場能力を活用して照明による演出効果を際立たせる必要が生じてくることがある。
例えば一つの演奏会がシリアスな曲目(*2)とくだけた曲目(*3)で構成されている場合、シリアスなものは生明りで、くだけたものは曲趣を盛り上げるために積極的に色付げを施したいという演奏者側の希望がある時、ホールの構造によってどこまで照明演出が可能であるかの違いが出てくるが、一般的な可能性について実例を通して見てみたい。
a. 音響反射板を通常の体裁でセットした場合
1]ダウンライトの分割
地明りとして必要な部分を選び、無意味な広がりを見せないことで演奏者に対する観客の意識の集中を補助する。
2]前明りの当て方の工夫
演奏者の眩しさに対する配慮。必要部分のみに当てることで演奏者と観客の集中度を高める。
色を使うときフロントとシーリングの色配置及び混合のバランスの工夫。
3]反射板に対するタッチの付け方の工夫
反射板の形状が立体的に見えるよう表情付けを工夫。
b. 正面反射を取り除きホリゾントが使える状態にセットした堤合
1]ホリゾント幕に対するエフェクトの工夫
ホリゾントの色変化ばかりでは単調になるので、曲調にあったタッチを施す。
c. サスバトンの使用が可能な場合
1]ダウンライトとの兼ね合い
地明りとして使用するスポットの色の選択。
ダウンライト(生明り)との併用による色あせに対する工夫。