E. シベリア鉄道とSLB(解説)
「シベリア鉄道」と「SLB」の区別
一般にはシベリア鉄道を利用した輸送はすべてSLBとして認識されているが、SLB(シベリアランドブリッジ)は、本来的にはシベリア鉄道を利用し、旧ソ連を経由し第3国に輸送されるトランジット輸送を意味する。
したがって、旧ソ連国内向けの貨物輸送に対してはSLBという名称を使用することは適当でない。事実、ロシアとの貿易業者はロシア向け貨物の鉄道輸送はSLBという呼称は使用せず、「シベリア鉄道」や「Bilateral(二国間輸送)」あるいは「ノントラ」といった呼称を使用している。
そこで、本調査では旧CIS諸国以西の鉄道輸送にはSLBという呼称を用い、ロシア(モスクワ)との輸送を想定する場合は、シベリア鉄道という名称を用いることにした。
SLBの輸送は1970年代には隆盛をきわめたが、80年代後半には大きく減少した。この原因は欧州航路同盟船社が船舶を高速・大型化し、トランジットタイムの短縮等サービス水準が上昇し、海上運賃も安くなったことが大きな要因である。加えて大きな打撃は、ソ連崩壊に伴いソ連がCIS諸国に分割されたことにより、鉄道の一元管理が不可能になったことにある。すなわち、従前は、SLBはトランジット輸送を司る全ソ連通過貨物公団(SOTRA)が一括して行っていたが、鉄道も各CIS国鉄に分割されることにより一元管理が行えなくなってしまった。
また、この混乱期には料金も乱高下し、盗難、ラフハンドリング等のサービスの低下が著しかった。ロシアの混乱が一段落し、再び鉄道輸送もCISとして一元化しようとする動きも出てきたが、この時受けた信頼感の喪失、ダメージの大きさは現在に至るまでも続いている。