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ICBLの事務局のほうからは、どうしてそんな情報すらないのかといった非難もしくは苦情がたくさん入ってくるわけですが、それは入手できない以上それは仕方がないということがありました。

日本のNGOは、この点が重要なんですが、東アジアの諸国、例えば韓国、台湾、中国といった国々のリポートもまとめる義務を負っていたわけです。これはなぜかといいますと、これは日本の問題と同じように、東アジア諸国において市民社会というものはまだ十分成熟していません。

アジア全般を見渡してみんなそうなのかと考えてみますと、国際会議などでは、インド、ネパール、フィリピン、バングラデシュといった国々のNGOは、極めて活発です。多くの場合こういったNGOの代表の方は、欧米の研究機関や大学に留学し、博士号を取得しているということも珍しくありません。ですから語学のハンディもなく、欧米のNGOと対等に渡り合えるわけです。

ところが、日本、韓国、中国、台湾それに香港もそうでしたけれども、NGOとなりますとまず語学のハンディがあり、経験不足、知識不足、人材不足というようなことがあって、なかなか欧米のNGOと対等に渡り合うことができない。そのなかでも日本というのは、欧米諸国と同様の民主主義国家であり、これだけ経済発展しているわけですから、当然、市民社会のなかでの期待も強まってくるわけです。

ですからICBLとしても、韓国や中国に関するリポートは日本が代表してやってほしい、市民社会がない国については日本が肩代わりしてほしいということを要請してきまして、日本のNGOが担当することになったわけです。

先ほど申し上げたとおり、日本国内ですら私たちボランティア団体としては、情報も入手することもできず、十分なリポートを書く力がない状態でした。にもかかわらず、そういった東アジア諸国の状況をリポートする責任も負わされているわけで、これは日本の市民社会にとって大きな課題であるのではないかというふうに思えるわけです。

今回のモニタリング・リポートを見てみましても、欧米のNGOに比べて日本のNGOが力不足だという言い方だけではなくて、アジアのなか、そのなかでも南アジアそして東アジアといった国々の市民社会の活動というものが、直接反映するかたちのなかで、トランスナショナル・シビルソサエティーのあり方、特にそのなかにおける日本の役割、責任というものが重要であるということを認識するに至りました。

 

 

 

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