第6部 高齢者の「長期ケア(Long-Term Care)」をめぐる新しい動き
1997年の総選挙のときに労働党が高齢者の長期ケア問題を選挙の争点とし、王立委員会の設立を公約の一つとしたことから、長期ケア問題についての議論や政策提案が活発になってきている。ここでは1999年3月に公表された王立委員会の報告書および1999年末に公表された「長期ケア憲章」をとりあげ、高齢者の長期ケア問題についての最近の動きを紹介する。
1) 「高齢者の長期ケア」に関する王立委員会報告書
●長期ケアに要する総コスト
同委員会はまず議論を進める前提として、高齢者の長期ケアにかかるコストの現状と将来的な見通しについて検討している。施設ケア(レストホーム、ナーシングホーム、病院での長期入院)および在宅ケア(ホームヘルプ、訪問看護、デイセンター、食事サービスなど)に要するコストを対象とし、高齢者本人が負担する分も含めて計算されている。ただし、社会保障給付のコストは含められていない。すなわち、公費と私費を含めた、高齢者の長期ケアにかかる現時点での総コストということになる。
これによると総コストは110億ポンドで、うち医療サービスが約25億ポンド、対人社会サービスが約45億ポンド、本人負担分が約40億ポンドとなっている(表27)。また、レストホーム、ナーシングホーム、および病院での長期入院を合わせた施設型ケアが約7割を占め、在宅ケアは3割のみであることがわかる。