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目的の適正さを見直してみたり、資源の有効利用の道を探ったりはしない。議会のパートナーであるべき地元企業やNPOとの関係にも無関心で、内向きの政治になりやすい。議会に設けられている委員会業務に多くの時間をとられ、しかも委員会は非生産的な細事の議論に終始し、戦略的なテーマを検討する場にはなっていない。そして重要事項は密室で決められやすく、オープンな形でのチェック機能も働いていない。市民にとっては誰が議会を動かし、誰が意志決定をし、誰が説明責任を負い、誰に苦情をいったらいいかもわからない。議員や議会のこうしたあり様が議会に対する市民の不信感を生み、これが低い投票率や選挙離れの原因になっている46)

政府が進める地方自治体の現代化政策では、議会のもつこうした古い体質を改善し、現代的な地域民主主義の場として議会を再生させることがねらいとされている。そのためにまず従来型の委員会制度を廃止し、代わって政府並みの閣議制が導入された。すなわち、すべての議員が同じような立場で議会政治に参加するのではなく、一部議員に政策の執行を担当させ、他の議員は政策の監査と地域内での住民とのコミュニケーションに時間を割くことを可能にした。こうして議員の役割を執行機能と代表機能に分割し、議会の執行力とリーダーシップを高める一方で、議会を地域に開かれたものにし、市民への説明責任も同時に確保しようとする考えである。また、自治体の選択として、首長を直接選挙で選ぶことも可能になった(例えば、ロンドンでは2000年に首長選挙が行われる)。

新しい政策的フレームワークとしては、上でみたように自治体のサービス提供および購入が、「強制入札方式」から「ベストバリュー方式」に変更されたことが大きい。強制入札方式では外部から最安値のサービスを購入することが最優先課題となり、地域住民にとって何が本当に必要なサービスなのかを考えることをしなかった。そして、そうした議会の対応の仕方が市民の議会への関心と信頼をさらに弱める結果を招いてしまった47)。ベストバリュー方式に変わったことで、議会では自らの立場をオープンにし、市民や企業との誠実な意見の交換を通して地域問題を検討し、地域にとって最善の方向性を追求することができるようになった。

このように、ベストバリュー方式によって外部へのサービス委託への強制が排除されたため、今後は従来型の自治体運営のサービスに回帰するような印象を与える。しかし、自治体の社会福祉担当者の声を聞くと、今後は「コーディネーター」としての自治体の役割がより一層鮮明となり、サービスの外部委託がさらに進むのではないかと予想する人が多い48)

 

 

 

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