すなわち、「目標の設定」「情報公開」「利用者の参加とコンサルテーション」「公正さ」「効果判定と継続的改善」「投資効率」「イノベーション」「パートナーシップ(連携)」といったコンセプトによって、公共サービスの現代化をリードしようとしているわけである。
現代化プログラムの一部はすでに実施に移されているものもあるが、多くは2000年以降に予定されており、その実効性については今後の成果を待たなければならない。ここではそれぞれの分野で導入されつつ政策やプログラムの主なものについてまとめてみた。
2) 国民医療サービス(NHS)
まずNHSの現代化政策は、1997年12月に出された政府白書「新しいNHS」の中で10年間プログラムとして示されている27)。
●内部市場の廃止と「複合的ケア(Integrated Care)」
この白書で明らかにされた最大のポイントは、競争による内部市場システムを廃止したことである。内部市場の発想はNHSの理念にそぐわないというのが現政権の考えで、代って医療と福祉の連携による「複合的ケア(integrated care)」の概念が導入された。ただ、医療分野における企画(購入)部門とサービス提供部門の分離体制は維持されており、競争によるやり方を廃止した代わりに、NHSに関係するすべての団体がお互いに協力し合うことを求めている。すなわち、「パートナーシップ」が新しいキーワードであり、NHS機関には自治体やNPO、民間業者などとの連携を進めるとともに、利用者の声をサービスに反映させることが新たな義務として課されている28)。また、こうしたパートナーシップを可能にするために、自治体とNHS機関による権限と財源のプールを可能にする法的措置が、1999年保健法(Health Act)の中に盛り込まれている。
●健康改善プログラム(Health Improvement Programme: HIMP)
医療と福祉の連携を図る戦略的フレームワークとなるのが「健康改善プログラム」である。HIMPは地域保健局の管轄地域を対象に作成されることになっているが、保健局ではその作成過程で地方自治体と連携をとらなければならないことになっている。また地方自治体もこのHIMPへの参加により、地域コミュニティの健康と福祉の改善を図ることが義務づけられている29)。これまでの医療対策が治療中心の受け身の対応であったのに対し、HIMPでは健康増進につながるプログラムを、医療と福祉の連携で積極的に推進することがねらいとされている。HIMPの中では国が設定する医療や健康面での全国基準への対応が図られる他、地域住民とのコンサルテーションを通して地域課題を探り出し、それについての地域全体としての対策も明確にされることになっている。また、HIMPはコミュニティケアプランや住宅政策など、地域で動いている個別政策とも連携をとりながら実践されることになっている。