第3章 フフンスの高齢者に対する社会保護制度
1 フランスの社会保護制度
社会保障制度は、疾病、老齢、家族の3つのリスクを主要な部門としている。いっぽう社会扶助は、困窮者の救援を目的として、社会福祉サービスないし現金給与による援助を与える制度である。しかし社会保障制度の財源からも社会扶助と同様のサービスや現金扶助を提供しているため、社会保障と社会扶助の区分は曖昧である。
社会保護のための給付金は、医療、家族、老齢・遺族、失業、その他の5部門に分けられる。各部門の支給額の割合は1980年代から殆ど変化しておらず【図表19参照】、合計支給額の4分の3は医療と老齢部門に割り当てられている。
社会保護支出総額に占める老齢部門の支出額(給付金および社会サービス)の割合は、1981年(41.4%)から1997年(43.6%)にかけて2.2ポイント高くなっているが、これは老齢年金受給者の増加が最も大きな要因である。この期間には、60歳以上高齢者人口の増加率(27%)より年金受給者数の増加率(50%)の方がはるかに大きかった。これは1983年に老齢年金受給年齢が65歳から60歳に下げられたこと、女性の就業率が高まったために女性の年金受給者が増加したことによる。またこの期間を通して老齢年金制度も改善され、以前より高額の年金が支給されるようにもなった。
1997年には、社会保護(給付金、社会サービス支出)のために24,265億フランが支出された。そのうち85%は、老齢年金、家族手当、失業手当、医療費払戻として直接支給された社会給付である。12%は社会福祉サービス給付支出で、公立病院に対する支給と税給付(扶養家族に対する所得減税)に当てられている。
国内総生産に占める社会保護支出の割合は、1981年の25.3%から1997年には28.9%と増加した。年平均0.23ポイント増加したことになるが、その間には増減変動があった。1981年から1985年にかけては2ポイントもの増加があったが、経済が持ち直した1985年から1989年にかけては1.1ポイント減少している。しかし国内総生産の伸びが鈍化する一方で社会保護給付支給額が増え、1993年には社会保護関連支出が国内総生産に占める割合が29.2%となった。最近では、社会保護支出増加率は国内総生産増加率よりも少なく、1993年と1997年を比較すると0.3ポイント増となっている。
フランスの社会保障制度は1980年代から深刻な赤字財政となっており、財政建て直しのために一般福祉税(CSG)と社会保障債務返済税(CRDS)が導入されている。