はじめに
1999年は国際連合が定めた「国際高齢者年」。その背景には、世界人口の高齢化があり、増加する高齢者への対応が国際的に問題となっているからであろう。
エイジング総合研究センターは、1986年「人口高齢化の社会経済的影響に関する国連専門家会議」を国連人口部と共催して以来、「都市化と高齢化」(1988年)、「高齢化と家族」(1990年)「寿命の伸長と社会の変化」(1993年)等国際専門家会議を国連等と共催しているが、欧米と比べて特異な我が国そして東アジア地域の高齢化社会を究明するために「東アジア地域の高齢化に関する専門家会議」を1994年以降(毎年)開催している。
「東アジア地域高齢化専門家会議」は、東アジアの関係専門家の日本事例に関する調査研究ニーズと、日本の日本型高齢社会の究明ニーズとが相俟って誕生したもので、毎年の研究テーマを基にその研究発表をする場として、上海、台中、大邱、東京等で毎年定期的に開催されてきている。
また、この会議を含め研究テーマに関する調査研究等プロジェクトの実施に当たっては日本財団の助成を受け、当センターが事務局を務め、中国の上海等東部地域、台湾、韓国そして日本の専門家や関係機関の積極的協力を得て推進されており、その研究成果は、当センターが毎年の報告書で取りまとめてきているが、このプロジェクトに参加された専門家各位も様々な機会とテーマにて発表されてもいる。
ここに上梓するのは、この三年取り組んできた「東アジアの都市の高齢化」を総括するため、東アジア地域を代表しかつ特性も有る上海市、台北市、大邱市の諸状況を事例に、人口高齢化、家族形態や地域社会の変化、高齢者の生活状況、そして高齢者福祉やその対策について取りまとめたものである。また、本書には東アジア各国の統計や調査データのほか高齢者の権益保障法なども集積しており、このところ急増している東アジアの高齢化研究者にも活用いただけるよう編纂している。
本書の取りまとめは当センターの責任において行ったものであるが、プロジェクトに参加されている皆様方のご協力、とくに馬利中(上海老齢科学研究センター)、金恵媛(東京外国語大学)、許麗津(一橋大学)の各位にはご尽力を戴いた。各位のお力添えに感謝申し上げるものです。
そして最後に、この研究プロジェクトをご支援下された日本財団に対し厚く御礼申し上げる次第です。
2000年3月
社団法人エイジング総合研究センター
理事長 高木文雄