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当世高齢事情 NO.9

 

社会の高齢化により、従来の慣習や一人一人のものの考え方もどんどん変わってきました。特にお金が絡んでくると問題はさらに深刻。そんな当世の高齢事情をもっとも身近に見ている公証人の方に道しるべのアドバイスをお願いするシリーズ。さて、あなたはどんな生き方を選択しますか?

 

お盆と正月が恐い

回答者 清水勇男

蒲田公認役場・公証人

 

Q 六五歳になる農家の嫁です。夫は長男で、弟と妹が合わせて五人いますが、みな都会で生活しています。大変なのは、お盆と正月のときです。昔からのしきたりで、年二回のこのときは兄弟が家族を連れて帰ってきます。全部で二〇人を超えます。幸い家が広く、部屋もたくさんあるので、寝泊まりに困るということはないのですが、一番困るのは食事の支度です。それにハウス栽培もやっていますので、暮れから正月にかけても手を抜くわけにはいきません。義母がまだ若かったときは義母が全部差配し、私はただ手伝っていればよかったのですが、その義母も八六歳になり、同い年の義父ともどもボケの症状が出てきましたので、家事一切を私が見るようになりました。農作業の手伝いもあります。また、義父と義母の介護も、いずれ私の肩にかかってくるものと思います。私も若くはありません。みんなが帰って行った後は、どっと疲れが出て、寝込んでしまったことが何回もあります。これから先、毎年同じようなことがくり返されるのかと思うと、気が滅入るばかりです。何とかならないものでしようか。

A 帰省ラッシュという言葉を見たり聞いたりするたびに私が考えることは、帰る人も大変だろうが、迎える人はそれ以上に大変なことだろうということです。民族大移動などと揶揄されながらも、盆暮れのこうした行事がなぜくり返されるのでしょうか。せめて年二回くらいは別れて暮らしている一族が一堂に会し、連帯の絆を確かめ合いたいということなのでしょう。

 

 

 

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