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友人で、ある会の会長をしているメタの八九歳の母親も二年前にそれまで住んでいた家を引き払い、美しい一ベッドルームのリタイアメントヴィレジに入所した。メタは買物のついでに寄ったり、観劇に連れ出したりとこまめに世話をしている。医者や看護婦も常駐している。

メタの母親のように加齢とともに施設に入る高齢者が増える。七〇代で約四九%、八〇〜八四歳で一一%、八五歳以上で三一%である。オーストラリアの圧倒的多数の高齢者は在宅で生活している。地方の農家などでは同居も見られるが普通は結婚した子供は家を離れる。

 

親たちは夫婦あるいは単身で住み、家事サービス、訪問介護サービス、ショートステイ、終末医療など多様なサービスを受けている。施設に入るか、在宅でどのようなサービスを受けるかを判定するのがACAT(Age Care Assessment Team)で、その判定に応じて費用が施設やサービスをする会社・団体あるいは自治体に支払われる。日本の学校や福祉施設は運営する法人組織に対し補助金が恒常的に支出され、既得権化しがちなのと大きな違いである。高齢者がその団体や施設のサービスに苦情を言ったり、施設を移ったりする権利も保証されている。だから高齢者はお客様だという考えが徐々に定着しつつある。また、看護婦など専門職と掃除洗濯などの補助職員、フルタイマーとパートタイマーを使い分け、いかに質の高い介護を効率的に提供するかについて工夫を凝らしている。

こうした施設には原則として一年に一回監察が行われる。その結果悪い所が発見されれば改善命令が出され、それでもだめなら補助金がストップされる。入浴の回数、散歩や食事の時間、介護者との会話など多くの活動を調べ、入所者やその家族にも聞き取り調査を行う。監察宮のレベルはなかなか高い。

 

 

 

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