とにかく味の薄いものをと強いてそれで味覚が落ちてしまうんですよ。もっと老人のケアに対しては、ここまでやってもいいですよと、そんな接し方、アドバイスの仕方がいいんですね。非常に緩やかな制限にしてあげることがまた生きがいを生むことにもなるでしょうし。
堀田 そういうふうに言われれば、自ずと自分を大切にしてがんばって生きていこうという気持ちになりますよね。
日野原 ネガティブ、否定的な医学や看護はもう脱皮して、もっとポジティブ、積極的に相手の意志や人格を尊重した接し方をしてあげることです。
堀田 そのかわり自分で責任を取るようにしなさいよと。
日野原 そうです。以前、ある知り合いの人が心臓に持病があったんですが、孫が卒業したら一緒に海外に旅行に行こうと約束してた。それで病院の先生に相談に行ったら、あなた死ぬ気ですか、心筋梗塞になったらどうするつもりなのかと。ノーと言うわけです。でもね、心筋梗塞をやってるお医者さんだって外国の学会にしょっちゅう出かけてるんですよ。
堀田 なるほど…。
日野原 患者にはノーと言うけれども、自分はそうしない。患者思いの医者であれば、そういうときには、まず今までの記録を持って行きなさいと。こういうときには向こうの先生に診てもらって、それと飛行機に乗るときは心臓が痛くなくてもニトログリセリンを舌下に入れれば狭心症が起こらず安心ですよと。
堀田 必要な範囲で教えて、あとは自分で判断できるように指導してあげることが大事なんですね。
日野原 ただ危険だ、だめだと言って医師自身の場合は構わないでは理不尽でしょう。だから私は医者に言いたいことは、先生方が行動するように患者に接しなさい、もっと幅を与えてあげなさいと。これがケアする心ですよ。
命というのは長さではなく質なんです。それが医療の基本であるということ、またみなさんもそのために自分の身体をどう健康にしていけばいいのかをしっかりと考えてみられること、それが今何よりも必要なことではないですか。
堀田 本当にすばらしいメッセージをいろいろと頂戴できました。ボランティア活動を推進していく上でも力強い励みとなって、みんな喜ぶと思います。ありがとうございました。