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企業ボランティア

できるだけ多くの社員にボランティア活動を

NEC

 

「…この前の日曜、東京で高校、大学生の『手話によるスピーチコンテスト』が開かれた。応募した一〇三人から選ばれた二〇人の話は、どれも心にしみ入った。…終日、人間っていいものだ、と思い続けた。一三回を数えるコンテストには、ずっとNECの社員が会場のボランティアとして参加している」――。

九六年八月二八日の朝日新聞「天声人語」にNEC(日本電気株式会社)のユニークなボランティア活動が紹介された。同社は朝日新聞東京厚生文化事業団主催の「手話によるスピーチコンテスト」に毎年資金提供を続けてきたが、八年前からはボランティアを希望する社員を募集し、受付・案内・表彰状授与などコンテストの運営一切を引き受けている。社員にとって、会社が協賛しているイベントに自分が参加しているという意義は大きく、これがNECの社会貢献活動の基本的な考え方となっている。

このボランティア活動を推進するのが社会貢献推進室で、八年前広報部に設立された。フィランソロピー担当課長の井上忠志さんは、自身の地域での活動経験を生かそうと志願してこの仕事を選んだ。

「会社の社会貢献活動というのは、社会貢献の担当者が仕事をすれば社会からは認められる。しかし、肝心かなめの社員の多くがその活動を知らず、うちの会社は何をやっているかわからないという状況が多い。それが果たして企業市民といえるだろうか。会社の組織を構成している社員一人ひとりが企業市民としての意識を持ち、その上に立った社会貢献活動であれば光った社会貢献活動となる」と話す。

同社のボランティア活動はまず基盤整備からはじまった。いきなり活動をはじめることや新しい企画を打ち出すにとでなく、地域社会の仕組みや地域社会が何を求めているかなどを調査・研究し、社員がボランティアとして活動できるムードをつくっていくことに重点を置いた。その後は、できるだけ多くの社員にボランティアとして活動にかかわってもらっている。一緒になって汗を流してもらうことにより、会社の風土や組織が変わり、社員の個性や価値観が向上していくからだ。

 

 

 

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