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当世高齢事情 No.5

 

社会の高齢化により、従来の慣習や一人一人のものの考え方もどんどん変わってきました。特にお金が絡んでくると問題はさらに深刻。そんな当世の高齢事情をもっとも身近に見ている公証人の方に道しるべのアドバイスをお願いするシリーズ。さて、あなたはどんな生き方を選択しますか ?

 

鈍感な夫

回答者 清水勇男

蒲田公証役場・公証人

Q 子供のいない夫婦です。夫は七一歳、私は六五歳です。財産としては、夫名義の今住んでいる土地と家屋、銀行預金、株式などで合計約四〇〇〇万円くらいあります。それに夫には内緒ですが、郵便貯金にしてある私のへそくりが約五〇〇万円あります。私は、夫に万一のことがあったら、夫名義の財産は全部私のものになるとばっかり思っていました。しかし、昨年の十一月でしたか、テレビ朝日の遺言特集を見ていて、双方の両親が亡くなっていても、配偶者に兄弟姉妹がいる場合には、遺言がない限り、遺産の四分の一はその兄弟姉妹にいってしまうのだと知って、びっくり仰天しました。夫は三人兄弟で、二人の弟が健在です。私にも妹が一人おります。

私は、夫にぜひ遺産は全部私に相続させるという遺言を残しておいてもらいたいと思います。遺言がなければ夫の弟二人に一〇〇〇万円持っていかれてしまいます。そんな現金はありませんから、土地・家屋を手放してお金を作らなければなりません。

しかし、夫は全然関心がないようなのです。このテレビも一緒に見ていて、私がいくら大げさに騒いでも、フーンと言うだけで、まるで対岸の火事です。私は夫に「遺言を書いておいてネ」と言いたいのですが、へそ曲がりの夫は、「それじゃお前はオレの死ぬのを待っているのか」などと開き直りはしないか怖いのです。どうしたら夫に遺言を書く気持ちを起こさせることができるでしょうか。

 

 

 

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