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最後になった入院の時には、淋しがるYさんのためにボランティアが交代で1日に2回も病院を訪ねていたという。寮母も仕事帰りや休憩時間にYさんを見舞っていた。Yさんは、ボランティアが訪ねるとその人の手を両手で握りしめ、「こうすると安心できるの」と言って離さなかったという。そして、苦しそうな息づかいで「あ・た・し・の…あ・と・か・た・づ・け」と手を合わせて拝むようにし、天井に指で「イ・ノ・チ」と書いてほほえんだという。また、寮母には、「誰かがいてくれると苦しくないの」と言うので、つい「みんなの所へ一緒に帰ろう」と叫びそうになったと話していた。

そしてある日の昼過ぎ、病院からYさんが永眠されたとホームに電話があり、寮母が病院に駆け付けると、静かに横たわっているYさんのそばにはボランティアがいた。ホッとして「ありがとうございます」と言うと、ボランティアは「私の方こそ看取らせていただいて、本当にありがとうございました」と頭を下げられたという。

高齢になるほど、自分の最期を看取る人は誰なのか予想できないものという思いがする。人と人の縁はどこで結び付いているのか不思議なものである。

 

 

 

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