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表紙絵から

池田げんえい/1946年神奈川県生まれ。日本児童出版家連盟会員。創作『鬼の会』同人。日本デザイナー学院講師。はり絵作家。

 

平成・東海道五拾三次 その51「水口」

 

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山車の行列が華やかに町中を抜けていく。

 

―水口祭り―

やーっ長かった! 何キロ歩いたんだろう。

田村神社―それはそれは太い杉林に囲まれている。突っ先に社がほんの少し見える。ズンズンズンと近寄るとずんずんずんと向こうも逃げる。思ったよりも深そうだ。どうやら、また、山越えせにゃならぬのか。疲れているし、そそくさと退散することにした。

打ちひしがれた思いで、大鳥居を出ると、そこにバスが。こんなことって滅多にあるもんじゃない。迷わず飛び乗る。うつらうつらのあと、「ミ・ナ・ク・チ」の声で飛び降りた。ちょうど、アーケードの奥から威勢のいい御輿の行列。もちろん、お尻をおっかける。前に山車が数基。ここにも京文化が生きていたのだ。祭りの行方を見届けたいがそろそろ宿へ。帰着早々、のり平婆さんの険しいまなざしでオロオロ。こっぴどくお目玉を喰らってしまった。めでたし、めでたし。

 

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水口辺り現景。

 

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安藤広重絵「水口」

 

季節は夏。水口名物のかんぴょうを作っているところを描いた図。ひとりの女がタ顔の皮をむき、それを他の女たちが干す。すぐに干さないとくっついてしまうのだという。

 

 

 

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