公的介護保険とふれあい社会づくり
特集 公的介護保険制度を考える
介護保険を民主的な社会を築く突破口に
介護の社会化を進める1万人市民委員会
(取材・文/阿部まさ子)
陳情や告発ではなく実現できる提案をする
「介護保険でどんなサービスを提供してもらえるのか、よくわからない」という声をよく聞く。これに対して、「介護保険はでき上がった制度だと思わないでください。介護保険はバラのつぼみです。放っておくと、つぼみのままドライフラワーになる可能性があります。これを大きく咲かせるのは、自分が住んでいる地域の首長、行政マンと住民自身、要するに私たち自身であるということです」と主張する人がいる。龍谷大学助教授の池田省三さん(関連記事→P46参照)だ。
介護保険制度を本当に利用者の立場に立ったものにするには、保険者である市町村が地域の実情に合わせたきめ細かい施策を策定し、実行しなくてはならないが、もうひとつ大事なことは、住民もまた自分たちが望むサービスのあり方を保険者に十分伝えて、市町村が作る保険事業の計画の中に反映させるということである。
「介護の社会化を進める1万人市民委員会」(以下、1万人市民委員会)は、こうした介護保険への住民参加を具体的に進める目的で、一九九六年九月に設立されたネットワーク。代表は樋口恵子東京家政大学教授と当さわやか福祉財団理事長堀田力だ。
1万人市民委員会の活動スタイルの特徴は「告発や陳情ではなく実現できる提案をし、相手に粘り強い説得をする。そして、結果に責任を持つ」(池田さん)ということ。それに加えて、活動主体は、戦後生まれ、戦後育ちの団塊世代と女性が中心である。また、厚生省の官僚有志も一市民の立場から会員になるなど、さまざまな分野の人々が参加している。これは今までの市民運動にない特徴であり、我が国市民運動のひとつの頂点をなすものであろう。
まず行ったのは、国会での介護保険法案審議に向けて、法案に「三つの修正・五つの提案」を提起したことだった。
三つの修正とは次の三点。
1]市民の手で介護保険の運営を