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残りの三つの軌道要素は、この楕円軌道と地球との関係である。図を参照しながら見ていくと、軌道傾斜角iは、楕円軌道面と地球の赤道面とのなす角、昇交点赤経Ω(地球の経度を使用することもある)は、軌道楕円面が赤道面と交わるところの赤経、すなわち、軌道の経度方向の向き、最後に、近地点引数ωは、地球中心における楕円軌道の近地点と昇交点のなす角で、地球に対する楕円軌道軸の向きで、これで楕円軌道と地球の関係が決まり、任意の時間における地球に対する衛星の位置が求められる。

衛星は地球の自転に関係なく、こうして決まった軌道を回り続けるが、その軌道自身が地球の重力異常、軌道上にある残留大気の抵抗、太陽や月の引力、太陽の放射圧などが原因で少しづつ変化する。これを軌道の摂動というが、その原因と影響の大きさは軌道高度などによって異なり、例えば、残留空気の抵抗は、低高度の軌道のみが影響を受け、軌道の長半径が少しずつ減少する。また、太陽や月の引力は高い軌道の衛星のみがその影響を受ける。地球上から見た衛星の位置などの関係は、上述の軌道の6要素で求めた衛星の位置を、地球の中心を原点として地球とともに回転する直交座標系に交換するのが普通であるがその計算法については省略する。

 

9・3 静止衛星

 

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この式から地上からの高さ約36000kmの円軌道に上げた衛星は24時間の周期を持つことが分かる。このような衛星が、地球の赤道上を東向き(地球の回転と同一方向)に回ると、地球の自転と衛星の軌道上の動きは完全に同期をするので、地上の各点から衛星は赤道上に止まったように見える。これが静止衛星である。

 

 

 

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