また、予測に関してはCPAに到達するまでの時間が必要になり、これをTCPA(Time to CPA)として考え、これらによって衝突の危険を判断する。
このCPAがゼロになるということは、すなわち、両船が衝突をすることであるが、これを避けるために、操作者は現況における自船の能力を考慮して、あらかじめCPAとTCPAとに適当な値(例えば自船から1海里以内に30分というように)に選定しておくと、この値以下になると音響警報を発するとともに、表示上でもその衝突のおそれのある船がどれであるかを、点滅などの表示によって知らせる。
更に、過去における相手船の位置は8分以内(3海里レンジでは2分、6海里レンジでは4分、12海里レンジでは8分)の4点以上の等時間間隔の輝点で表示できなければならない。この表示は、過去にその船が針路又は速力の変更をしたかどうかの判定に使用される。ある種の機器では、上述のベクトル表示のほかに、あらかじめ設定された衝突の危険範囲などの特殊な図形を表示面に出すこともあり、この図形は衝突の危険状態の判定に使用される。
このように衝突を予測と回避の二つの観点からみると、予測する場合には相対速度のベクトルに対して、また、回避する場合にはアスペクト(注)*等を知るために、それぞれに真速度のベクトルが必要になってくる。
相対速度のベクトルと真速度のベクトルとの関係を図示したのが図6・8である。
まず、相対速度のベクトルで概略のCPAとTCPAとを知ることができ、これによってそのときのレーダーの視野の中の全般の危険度を一目で把握することができる。次に、真速度のベクトルによって、目標の速力と針路を把握することができるので、アスペクトが明りょうに変わる。すなわち、これによって海上衝突予防法等でいう態勢関係(横切り、追越し、同航、反航等)がつかめ、衝突の危険がある場合には、どのルールが適用され、どのように避航すればよいかが分かる。