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図8・4 屈折率の変化による電波径路

 

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図8・5 周波数による電離層内の電波

 

こうして、図8・5に示すように電離層ではその状況によって差はあるが、10kHzから 20MHz程度までの電波は曲げられてしまい、地上に戻ってきて地球の外に出ていくことはできない。また、その高さは電波の周波数が低いほど下方から戻ってくるようになる。しかしVHF帯以上の周波数の電波は、電離層を通り抜けていくことができ、また、人工衛星からの電波のように上から下へも伝わることができるが、VHF帯とUHF帯の電波は、また電離層による電波の屈折効果を受けてその通路が湾曲して伝搬路が長くなり、伝搬の遅れを生ずる。そして、この遅延の程度は周波数の自乗に逆比例する。

 

8・3 超長波と長波の伝搬

 

超長波(VLF)帯の伝搬は、電波が図8・5に示したように電離層で反射すると考えるよりは、マイクロ波が導波管の中を通ると考えるのがよい。船舶で利用されている超長波のシステムはオメガ航法システムであるが、その使用周波数に近い10kHzの電波を考えるとその波長は30?となり、電離層のD層の高さは昼間は70?、夜間は90?なので、この高さと波長とは同オーダーになる。このため、オメガの電波は、地表面とD層を両面とする同心球の間を伝わっていき、これはマイクロ波の伝送に使用される導波管の中の伝搬と同じように考えることができる。ただし、地表面が海水面のようなところは電気の良導体であるから導波管壁と同様と考えてよいが、自由電子の存在する電離層は〔磁気的〕な良導体であり、電気力線がその壁に並行になる。そこで、地表面と電離層の間の伝搬のモード(一次モード)は図8・6(a)に示すようになり、更に、同図8・6(b)に示すような二次モードも若干存在はするが、電離層の高さと電波の波長の関係で減衰が速い。しかし、この二次モードが存在すると、位相速度の異なる両モードの位相が合成されて、正しい伝搬時間を計測できなくなる。

 

 

 

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