(1) 直接波
送信空中線から受信空中線に直接到達する波をいい、したがって見える範囲内での伝送となる。人工衛星からの電波もこれに相当する。
(2) 大地反射波
送信空中線からの送信が大地(海面を含む)に当たって反射されて受信空中線に達する波をいう。
(3) 空間波
Space Waveの日本訳で、直接波、大地反射波及びこの両波の合成波をいう。ただし、この空間波は、電波航法の場合にはSky Wave(上空波)の訳語として使用される例も多い。
(4) 地表波
地表面に沿って伝わる波のことをいう。この波は、空間と大地という二つの面の存在を条件として伝わる波であって、直視距離内の伝搬とは限らない。回折によって地球の陰の部分にまで回り込む波を特に回折波という。
(5) 地上波
直接波、大地反射波及び地表波の総称
(6) 上空波
Sky Waveの日本訳である。(3)で述べたように空間波という用語が使われる例も少なくないが、これは電離層で反射されて戻ってくる波のことで、電離層波というのが正しい呼び方である。この電離層波を使ったときの航法での補正表は"空間波補正表"と呼ばれており、普通上空波補正表とはいわない。
以下、電波の周波数をある程度大別して、それらの伝搬特性を述べるが、通信の場合と異なって電波航法では電波の伝搬時間の変化や水平方向の電波の曲がりが問題になるのでそのような点を主体にして述べていくことにする。
8・2 電離層
地球の上空にある薄い大気は太陽からの紫外線やX線の作用によって電子と陽イオンとに電離をして、自由電子が空間に存在するようになる。このような層を電離層といい、地上数10kmから 1,000km程度にまで及んでいる。観測によると、この電離層内の電子の存在密度は一定でなく、高さ方向の分布をみると電子密度がピーク値を示すところが幾つかあり、その高さや電子密度のピーク値は季節や時間によって変化する。代表的なその状態を示したのが図8・3 であって、ピークのところを下から順にD層、E層、F層(F1とF2に分かれる)という。電離層の状態が昼夜や季節で、変化をするのは太陽からの放射線の変化によるものであって、太陽黒点の爆発等に起因する異常放射は電離層のじよう乱(電子密度の異常変化)となって電波の伝搬に影響を与える。