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2 現在の症状、与薬、注射、処置内客、質問の内容

 

この項目が一番大切です。患者からの聞き出し方は次の節にも説明してあるので参考にして下さい。今までの多くの通信例では発病しても直ぐには助言を求めないで、一応何らかの処置をしてから、症状が回復しない時に初めて相談してくる事が多い様です。

ケガの場合には見えている創や出血している所ばかりに目を奪われていないで、頭部など他に隠れた打撲が無いかを確かめて下さい。頭部、胸部、腹部等大事な内臓の打撲を見逃すことが多いので、患者の苦しい所や痛い所に自分の手のひらを当ててさすって見て下さい。問題の場所の熱っぽさや硬さなど異常な所が分かるものです。

苦しんでいる患者から要領良く上手に聞き出して、その症状と経過、処置などを書きますが、それに加えて全身状態の把握をして下さい。このために次に述べるバイタル・サインをチェックする必要があります。

バイタル・サインは、次の10項目です。これを基礎生命現症と基礎生活現症とに分けて考えて下さい。

1]脈拍 2]呼吸 3]体温 4]血圧 5]意識の状態 6]睡眠の状態 7]食欲の状態 8]排泄の状態 9]皮膚の状態 10]体位・姿勢

 

基礎生命現症とは、生きてゆく者にとってなくてはならない現症、つまり脈拍、呼吸、体温、血圧の事です。脈拍数、呼吸数を一分間の数で表わし、その強さ、深さとリズムが整か、不整かなどの状態を表現します。

血圧は、最高血圧と最低血圧を水銀柱の高さ(mm)で表わす。例えば、(146/84)。

血圧を測るのには背臥位でも座位でも良いが水銀柱の一番下を心臓の出口(大動脈の始まり)の高さにする。

患者の状態によっては時間的な変動が激しいことがあるので、時間を追って何回も測定し、その度に記録して下さい。

体温は、摂氏の温度で表す。腋の下以外で測った時だけその場所(舌の下とか肛門内とか)明記して下さい。

脈拍、呼吸、体温などについては、『正常』とか『異常なし』とだけ知らせて来る場合があります。測定した数字を知らせて下さい。

バイタル・サインが今は正常範囲であっても意識が回復しなければ、脳死も有り得るので、応急処置をして慎重に経過を見る必要があります。

 

基礎生活現症とは、睡眠、食欲、排泄の状態のことで、意識のある患者からしか聞き出せません。人間が毎日生活するのに必要な生理的なリズムです。

これが不調になるのは何か特別の状態か、病気があると見なされる時であり、他の症状と突き合わせながら判断することになります。

睡眠が十分でないのは、寝付きが悪いのか、全然眠れないのか、その原因として寝汗のためか、痛みのためか、心配事のためかなどを聞いて下さい。食欲が無い場合はどうして無いのか、吐き気のためか、むかつくためか、げっぷが出るからか、痛むからか、よく聞いて下さい。

 

 

 

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