II. 海上医療通信の方法
1 海上医療通信のしくみ
船内においてケガ人や急病人が発生したとき、まず症状チェックの上応急処置を施し、より適切な処置を行うため、医療の助言を求める通信連絡が行われます。その手段方法は、大別して4つあります。
1]インマルサット(海事衛星)を利用して直接連絡する。
2]海岸無線局を経由して連絡する。
3]会社、その他を経由して連絡する。
4]船舶電話を利用して直接連絡する。
この中で、音質の高品位性や即時性、医療通信の無料扱い等、いろいろなメリットのあるインマルサット利用が多くなっていますので、その通信手段について説明します。
2 インマルサット通信
現在、地球上に4つのインマルサット(海事衛星)が打ち上げられています。太平洋、インド洋、大西洋の赤道上を飛行するこれらのインマルサットを利用して、地球のどこからも即時通信を行うことができます。
日本では、KDDがインマルサット通信を提供しており、太平洋、インド洋海域を受け持つKDD山口地球局と、大西洋海域を受け持つKDDブルム地球局があります。これらの地球局は、船員保険無線医療センターのテレックスと直通のため、それぞれの船舶地球局を設置すればインマルサットを通じて通信することができます。このインマルサット通信で医療助言を求めることができる医療機関は、別表(P122)の通りです。国内でテレックスを設備して医療通信ができる施設は、現在は、船員保険無線医療センターだけです。インマルサット通信は、完全な即時性があって、地上の通信と同じようにテレックス通信と電話通信、ファクシミリ通信ができます。呼出し番号と接続方法等は次の通りです。
32#……医療助言通信(医師に援助を求める場合) ※医療通信作業手順を参照
太平洋/インド洋海域(山口)→手動接続で病院機関へ接続
大西洋海域→自動接続で船員保険無線医療センターへ接続
38#……医療援助通信(怪我人を緊急に陸上へ輸送が必要な場合、救助調整センターに救助ヘリ等を要請する場合)
太平洋/インド洋海域(山口)→手動接続で病院・救助調整センターへ接続
大西洋海域→自動接続でオランダのコーストガードヘ接続
3 遠隔医療支援システム
現在、インマルサットBシステムを通じて、船舶と医療機関の間で動画像通信を行い、画像、音声で医療助言と治療指示するシステムが開発され実現しました。同時に心電図、血圧、血中酸素濃度測定も可能となり、ビデオカメラを通じて患部の画像からの診断や治療指示もできるようになりました。新たに動画像送受信装備など付属品が必要となります。