日本財団 図書館


記念講演

 

015-1.gif

 

「子育て支援と里親の役割」

上智大学教授 網野武博

 

皆さん今日は、只今御紹介いただきました網野と申します。私は何年前からでしょうか全国里親会の理事も仰せつけられまして、それ以後色々な里親会の関係の方々と色々一緒に話をし合うという機会も増えてまいりましたが、私自身今御紹介戴きましたように子供の福祉或は子ども家庭福祉という分野で、今色々な分野に携わっておりまして、特に里親に関しては個人的にも色々な関心、或はそれこそ里親ではないですけれど、例えば東京都でフレンドホーム制度的な事も行っておりますので、そういう事を通じて実際にも少し体験させていただいております。その中でも本当に子供達にとって育ての親というのはどのような意味をもつものだろうか、色々学ばせて戴いております。

今日戴きましたテーマが「子育て支援と里親の役割」という事でして非常に大きなテーマですので、これから一時間程お話し申し上げて、改めて特に里親の皆様或は里親に関係する皆様方への新たな期待をこめて、現状これからの展望についてお話申し上げたいと思います。

子育て支援、この言葉最近非常によく使われておりますけれども子育って一体なんだろう?「子供を育てる」これがいうまでもなく子育てですが、子供にとっては育てられる部分ともう一つ自分自身、一人々々一生懸命生きているんだよ育っているんだよと言う思いもやはり持っておりますね。ですから子供を育てるという部分だけではなくて、子供は育っているんだというその部分両方々々を含めた意味で子育て支援という事を考えていかなくてはいけない。

一般の方々に「子供は誰によって育てられますか」というふうに時々色々な時に、私お聞きします。殆どの人がちょっとびっくりしたような顔をして「親に決ってるじゃないですか」という感じの返答がもどってきますよね。ところが子供の福祉とか教育とか色々な子供との関わりの深い分野の方々は「親に決っているじゃないですか」というニュアンスは少し薄れてきますよね。その時に「親に決っているじゃないか」という「親」というのは何だろう?それこそ誰が育てるのですかと聞かれて「おやおやと…」ちっとも面白くないですね。

親と初めて疑問符をもったような時にまずイメージとして浮かびますのは実の親、もうちょっと深めていくと生みの親というふうにだんだん具体的に絞って親という言葉を使っていきますよね。昔から「氏より育ち」とか「生みの親より育ての親」という言葉がありますね。まさに里親の方々の営んでおられるその姿というのはかなりその部分が入ってきますからなかなか一般にはそれは受け止めにくい部分があります。言うまでもなく子どもにとって誰が一番その育っていく上で責任を持っているかというと実の親という事になりますし、お父さん、お母さんという具体的な姿で受け止める事ができます。

しかし、ここで私自身まずお話し申し上げたい事は、今日の資料の24ページに簡単なレジメを記してありますが、まず子育てと親という事をちょっと考えていきたいと思います。ここには生みの親と育ての親という事で生物的親、それから心理的親、社会的親というふうに敢えて( )で書いています。「生みの親が育ての親だ」これは自然の摂理、神の摂理からいっても一番望ましい形である事は恐らく誰もが受け止めるでしょう。

昔は遺伝的にも、或はお腹を痛めて生んだ、特に母親にとってはそれは生みの親の特徴でもありますし特権でもあったわけですね。最近は段々科学が進歩して、医療技術が進歩して、何やら不思議な現象が色々起こって来ました。普通は生みの親というと血を分けたお父さんお母さん、生物的な親はこの2人のはずなんですが段々生みの親が3人という事が増えてきているんですね。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION