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いざなぎ流の御幣……梅野光興

 

◎神楽に関連する祭文と儀礼◎

高知県香美郡物部村(かみぐんものべそん)に「いざなぎ流」という民間信仰が伝えられている。いざなぎ流は陰陽道、修験道、神道、仏教などが混然と混じりあった内容で、集落内の太夫(たゆう)と呼ばれる「いざなぎ流」を習得した者たちによって連綿と受け継がれてきた。いざなぎ流の伝授は世襲ということはなく、習いたいと思う者が師匠についてその方式を学んでいくのである。太夫になると、毎年のすす祓い、家祈祷(やぎとう)から、大規模な家の神の祭り、神社の祭り、大山鎮め、病人祈祷、米(ふま)占いなど太夫の得意に応じて、村人などの依頼を受けて、祭りや祈祷にたずさわっていく。

いざなぎ流は「呪い」のテクニックなどその特異性が着目され、最近では「生きている陰陽道」として注目されているが、祭文や儀礼の内容をみると、直接的には各地の神楽に関連する部分が多い。愛知県の花祭りや広島県の比婆荒神神楽、対馬の法者などと同様の方法が四国山中に定着し、変容していったもの、それが現在のいざなぎ流のようである。

 

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1]山の神の棚を飾る太夫。大シバつなぎと呼ばれる幣が上に飾られている。(99・3・3 物部村市宇十二所神社)

 

 

 

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