第1章 姉子の浜の特性と保全の意義
1-1 日本海側の地形景観の特性
(1) 日本海側の典型的な海岸
日本における砂浜海岸のイメージは「白砂青松」である。実際、現在の日本の海岸線をその構成している材料別に見てみると、磯と浜、そして珊瑚礁で出来ている。さらに気候風土の違う南西諸島を除けば、岩か砂礫の連続で海岸線が構成されていることが言える。そして日本の海岸線の多くの部分を構成する砂浜と、人間が共生するための知恵として植えられたのが松林である。これらがそのまま日本の海岸線の基本的な原型像として定着したのである。しかしここで再び、現在の日本列島の海岸線を見渡してみて気付くのは、人工海岸の領域の多さである。特に太平洋側や瀬戸内地域において、多くの海岸線が人工的に改変されているのが実状である。
一方、日本海側に目を移してみると、それほど大きな人工海岸がつくられることなく、海食崖海岸いわゆる磯と、砂質海岸や砂丘が連続していることがわかる。特に能登半島から北部九州までの海岸線は自然海岸が顕著に残されている。このことは鳴き砂の浜がこの地域に多く残されていることとも関連があるだろう。またその砂質海岸の形状は、大小規模の差はあれど、弓なりに湾曲している。これは北部九州ではさらに顕著に見ることができ、小さな磯と弓なりの砂浜が細かく連続している。
鳴き砂の浜に関して考えてみると、この北部九州で風物詩として見ることの出来る、玄海の冬場の荒波というが特色の一つであると言える。これは特に姉子の浜において、一度鳴かなくなった砂が再び鳴いた理由のひとつとして、「玄界灘の荒波のお陰である」と言われていることから、砂を洗浄することの出来る環境的な重要な要素としてあげることができるだろう。