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研究と報告

 

独立型ホスピスにおける食事システムとその運営

平野 真澄*1  西立野研二*2  日野原重明*3

 

はじめに

当ホスピスが開院して以来、一般病院あるいは在宅とは異なる独立型施設ならではの視点からの食事サポートをめざして、多くの試行を重ねてきた。入院時主訴の中で食事摂取に関連の深い食欲不振は、前回のこの研究会で困難な食欲不振への対応について症例を通じて紹介した。今回は、嚥下障害への対応を通してホスピスケアにおける食事援助システムのありかたと問題点の検討を行いたい。

 

ホスピスでの食事の現状

WHOがあげているパリアティブケアの6つの原則の中で、ホスピスでの食事のあり方を示唆していると思えるのは、1]痛みの対策と症状のコントロールを行う、2]死が訪れるまで、積極的に生きられることを目標に医療を行う、の2項目であると思われる(表1)。

ここで、1]の症状緩和の観点から食事の果たす役割を実際のデータを引きながら考えてみたい。

1998年4月から1999年3月末までの年間在院中の患者117人(平均年齢66.4歳・平均在院期間37.9日)の原発疾患は肺癌21%・胃癌18%・大腸癌12%・頭頸部癌7%・肝臓癌5%・膵臓癌5%の順であった(図1)。

 

表1 パリアティブケアの原則

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図1 原発疾患 (1998.4〜99.3)

 

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図2 入院時の訴え (1998.4〜99.3)

 

入院時の主訴を出現順に紹介すると、1]痛み 60%、2]嘔気・嘔吐 25%、3]食欲不振 21%、4]呼吸困難 20%、5]全身倦怠 14%、6]咳嗽 10%、7]腹部不快・膨満 10%、8]浮腫 7%、9]嚥下困難 3%の順であった(図2)。このような上位の訴えの中で、食欲不振と嚥下困難は食事摂取や栄養状態に重大な影響を及ぼす要因である。嚥下障害は、入院時の訴えでは3%と食欲不振に比べて低率ではあるが、これを在院期間を通じて追うと、病状の進行に随伴して出現率が19%(23人)の増加をみせる症状の一つである。

 

*1 ピースハウスホスピス栄養科長

*2 ピースハウスホスピス病院長

*3 ライフ・プランニング・センター理事長

 

 

 

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