では、どうしたらいいのでしょうか。
まず、家族はそれぞれの役割をはっきりと自覚することです。それによって力の争いを避けることができます。
家族はややもすると病気を治そうと必死になるのですが、摂食障害を治す責任は家族にはないことを認識することです。これは家族の誰かが虫垂炎になったと考えてみるとよくわかります。虫垂炎になったのは家族のせいではありませんし、ましてや家族がその治療をするというようなことはないでしょう。家族の役割は、虫垂炎がどのような病気なのかをやさしく、そして確信をもって説明し、適当と思われる病院に連れていくことです。病気のことは、それを専門にする医師に任せることで、家族は安心してその回復を見守ることができるでしょう。拒食や過食もこれと同じように、当人の問題として専門家の手にゆだねることです。
また、摂食障害は女性としてのアイデンティティーの混乱があり、それは父との関係の希薄さが原因であり、この関係の改善を図ることが重要です。これには時間もかかりますし、ときによっては家族カウンセリングを受ける必要があるでしょう。
また、母親としては、自分自身のアイデンティティーを点検して、体重なども含めて外見へのこだわりや自信のなさなどがなかったかどうかをチェックすることです。女性としてのアイデンティティーが混乱していると、それが娘の女性としてのアイデンティティーの形成に大きな影響を与えるからです。
最後に、家族は、専門家の援助によって、拒食や過食に至った原因やそのダイナミックスを把握して、それが当人だけでなく家族全体の問題であることを直視することです。
しかし、このプロセスの中で忘れてならないことは、原因が明らかになっても、それに関わる家族の誰かをせめるようなことをしてはいけません。なぜなら、原因を知るのはあくまでも治療に必要なことだからです。