そこで、1993年以降は各センターに超音波エコーガイド下での吸引針生検という方式を導入し、得られた細胞を染色して細胞の異型度から現場でのがん診断を試みた。その結果、446例に細胞診を実施したところ、結節の約7%(ゴメリ州では約20%)に甲状腺がんが認められた(表5)。
正確な疫学調査はこれからの問題であるが、事故当時0〜5歳の子供達に集中して多発しているチェルノブイリ周辺の甲状腺がんも、現在ではその発症年齢が思春期以降から青年期へ移り、今後成人となるにつれてがん患者の頻度や傾向も変わると考えられる。これらの被曝した集団の中で、将来がんが発生するリスクの高い人たちを集中的に検診、追跡調査することが望まれている。また、同時に既に甲状腺の異常が発見された人々の適切な治療や長期にわたる継続監視体制の整備も必要である。