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バーゼル市・ランゲ・エルレン森林に放水後の様子

 

先に訪れたフライブルグとバーゼルは、ライン河の上流地帯「Regio(レギオ)」を構成する地方、即ち、南はスイスのジュラ山脈、東はドイツのシュヴァルツヴァルト山脈(黒い森)、西はフランスのヴォージュ山脈と、これらの山並みに囲まれるように位置する地帯は、お互いに隣人として経済的・社会的・文化的に深い関係にあります。

ボーデン湖からほぼ西進してきたライン河はバーゼルで大きく北に迂回しますが、ここに建設されたのが、「人工的地下水」づくりを実践しているバーゼル市水道局の浄水場です。

もともと地下水を水源としていたこの地域は、20世紀半ばには地下水が不足したため、ライン河から汲み上げた水をランゲ・エルレン森林にまき、30〜50日の自然の土壌濾過で自然の地下水と混合させた上で、これを改めて地下水として汲み上げ軽い塩素消毒を行い配水しています。

表流水を手間暇かけて自然浄化により人工的地下水に転換するという方法は、日本では馴染みの薄いものであり、ボーデン市の湖中水と同様に、ヨーロッパにおける水源に対するこだわり・思想を垣間見ることができました。

 

3 フランス・パリの下水道

 

最後の訪問先は、昨年完成したばかりのパリ首都圏内最大の規模を誇るシアップクリテール下水処理場(パリ都市圏広域下水処理組合)です。

パリの下水道設備の歴史は古く、19世紀半ば、二月革命を機にナポレオン3世が皇帝となりオースマンをセーヌ県知事に任命して以降、パリの近代化・美化に取り組み、19世紀後半には、人が立って作業できる高さをもつ大幹線下水道を完成させました。

こうした歴史的な社会資本の蓄積に加え、この処理場は最先端の技術を駆使した機械化・中央制御システムが徹底しており、目をみはるばかりでした。

 

おわりに

 

日常的なデスクワークを離れ、外から日本を見ながらヨーロッパの公営企業を肌で感じたことは、これまでの私たちの仕事を見つめ直すことであり、大変有意義であったとともに、帰国して日本各地に戻っていった団員の皆さんがその体験を広く生かすことが公営企業の更なる発展につながるものと思います。

このような機会を与えて頂いた(財)自治総合センターをはじめ、調査に際して大変お世話になった各国の皆さんに、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

 

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パリ・最先端の設備の説明に耳を傾ける調査団

 

 

 

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