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10.2.3 一括請求が、使用(もしくは量)によって決定される事例もある。利用可能性にかかわるリスクの完全な移転が適正なのは、事業者が将来的使用を予測し、これに影響を与えることができる場合のみである。こうした例としては、事業者がそのサービスに対する需要レベルの予測に満足しているか、あるいは契約の有効期間中に第三者からの相当量の収入があるか、もしくは契約の終了後にその機会があるか、いずれかの場合である。多くのプロジェクトでは、第三者からの相当量の収入を創出するための需要もしくは範囲を予測することは不可能であり、それゆえ量に関わるリスクの移転が、VFMをもたらす見込みはほとんどない。しかしながら、使用に関わるリスクの一部であれば、移転できる契約もある。というのは、顧客は利用可能性とサービスの質に“自分の足で投票する”からである。むろん、使用に関わるリスクはいっさい移転できない(給食施設が提供されている場合でさえ)プロジェクトもあり、使用に関わるリスクを不適正な事例で移転すれば、結果的にVFMは台無しになる。

 

10.2.4 支払いメカニズムには、契約期間中の一般物価水準の変化(すなわちインフレーション)に関連する規定が含まれることが多い。これに関連する諸問題は【14.2 物価スライド制】において提示される。

 

10.2.5 当局は適時のサービス提供に対して支払いを行うべきであり、支払いは不合理に留保されるべきではない。また、当局は延滞に関わる政府政策を遵守(すなわち、支払いが送れた場合の延滞利子を支払うことに合意)すべきであるから、契約は近年導入された『1998年商業債務の延滞(利子)にかかわる法律(Late Payment of Commercial Debt(interest)』の該当する規定を考慮に入れるべきである。また、当局はその事業者がこの方面における最良の業務慣習を遵守することを確実化するよう対策を講じるべきである。

 

10.3 直接的インセンティブか、もしくは非金銭的な間接的インセンティブか

 

10.3.1 事業者が不履行をなした場合、その不履行を矯正させるには間接的インセンティブと直接的インセンティブの二種類のインセンティブがある。

 

10.3.2 直接的アプローチは一括請求からただちに減額を行うもので、これはサービスの利用可能性によって異なる(【7. サービス提供の必要条件と利用可能性】を参照のこと)。たとえば、刑務所の監房もしくは教室のうち一定数が該当する利用可能性を満たしてない場合、利用可能性に対する支払いは減額される。契約は、事業者がみずから不履行を是正するに十分なインセンティブが含まれていなくてはならない。長期にわたる利用不能は、契約を終了させる事由を誘発する(【20.2 事業者の不履行時の終了】を参照のこと)。

 

10.3.3 非直接的なアプローチは利用可能なサービスの履行水準によって異なり(【9. 履行の監視】を参照のこと)、違反の重大さにしたがって変化する業績ポイントという報償によって示される基準以下の履行に関わるものである。事業者が一定レベルの業績ポイントを蓄積すると、結果的に一括請求からの減額が行われる。履行が悪化して一定水準を下回るか、もしくは一定数の業績ポイントが蓄積されたとたん、正式な警告に始まり契約違反を理由とする最終的な契約終了に至るまで、それ以外のさまざまな非金銭的インセンティブが課される可能性がある。

 

 

 

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