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9.8.2 顧客の満足度調査−金銭的補償の基礎を顧客の満足度調査に置くのはむずかしい。というのは、そうした調査は、計量可能な、確固たる事実というよりむしろ、個人の認知に立脚したものであり、見本抽出のせいで個々の調査結果は様々だろう。しかしながら、長い目で見れば有効な履行監視方法だし、さまざまな部門の多数のプロジェクトで用いられ、優れた成果を上げてきた。鉄道のフランチャイズ契約は、年に2度独立自営の会社による顧客の満足度調査とその結果の公表を義務づけている。経営者は、顧客の満足度を改善する義務を負っており、調査の結果、一定基準を下回る面があると、問題を矯正するための活動計画を提案し、当局の同意を得なくてはならない。

 

9.8.3 謎の買い物客−同様のアプローチとして、“謎の買い物客”調査(すなわち、有資格の個人を用いた、様々なサービス局面のテスト)を採用することもできる。この方法では、有資格の個人がテストされる業務の様々な局面に対して同一の客観的基準を用いるので、個人の認知にかかわる側面が除去される。プロジェクトの中には、いずれの調査にも不向きなプロジェクトもあるが、そうしたプロジェクトでは契約の中でサービスの品質を詳しく定めるべきである。

 

9.8.4 見本抽出−監視が抽出された見本で行われる場合、契約の締結前に、見本の規模、頻度をはじめ見本抽出の方法論について合意がなされるべきである。

 

9.9 下請業者の監視

 

9.9.1 下請業者から事業者の履行が期待はずれの場合、当局は、契約を用いることにより、下請業者に干渉できるようにして、みずからの利益を守りたいと思うかもしれない(たとえば、当局は下請業者の交代を命令もしくは要求する権利を欲するかもしれない)。こうしたアプローチは推奨されない。というのは、下請業者を管理するのは事業者であり、当局の干渉はすでに達成せされたリスク移転の度合いに影響を及ぼすからである(【15. 下請業者と雇用者】を参照のこと)。当局がそうしたアプローチを採らずに履行が基準を満たしていないことを提示するには、支払いメカニズムと契約を終了する権利を頼むべきである。

 

9.9.2 支払メカニズムにもとづく減額、究極的には基準以下の履行を理由に契約を終了するという当局のリスクは、事業者にとって、下請業者の履行を管理しようという十分なインセンティブになる。事業者は、一般的に、当局の契約にもとづく契約を終了する権利が発生する前に下請業者を交代させる権利を、プロジェクト資料にもとづき、確保する。下請業者の履行に関する懸念は、事業者の費用負担で監視を一時的に増強すること、およびサービス提供の瑕疵をいかにして是正するかを概説した、承認可能な計画を事業者が提出することを、契約の中で要求することにより、表明されるだろう。これら二つの方法は事業者に出費を課すことになるので、継続的かつ立証可能な期間にわたり基準以下の履行が続いた場合のみ容認することができる。

 

 

 

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