○本調査研究において新たな空間創出の必要性が前提とされているが、港湾における貨物の取扱量については、運輸省において「港湾計画」の改訂作業で内容の詰めを行っている段階であることが指摘された。このため、本調査研究はその検討過程における未確定値をベースとして検討を進めていることを明確に表示することとした。
○呉港においてはすでに耐震強化岸壁2バース(阿賀・宝町)を既設または工事中であり、これと新たに整備する港湾空間の機能についての役割分担を明確にしておかないと、機能面で重複する懸念があることが指摘された。
○防災に関連して検討するに当たっては、以下のような点に留意すべきことが指摘された。
岸壁だけでなく周辺道路や後背地の埋立て地についても考慮に入れておく必要がある。例えば、道路の状況や都市内部の拠点がどの様になっているかについて把握しておく必要がある。震災時に浮体だけが残っても何も意味がないということになってしまうことが指摘された。この点に関しては、道路、後背地、都市内部拠点等についてそれぞれ防災対応の検討が進められるなかで、メガフロートの採用についても考慮されるべきであることが指摘された。
物流機能との併用については、災害時にコンテナを他の場所へ移動することは困難であり、コンテナヤード、マーシヤリングヤード、上屋、空コンテナプール、トレーラープール等は平常時と災害時に共用することは論理的に無理があるのではないかということが指摘された。この点に関しては、他機能と併用するに際しての運用面での研究を重ねていくことが今後の課題となる。
また、利用度が低い施設を補助事業で行うことはできないであろう。港湾環境整備事業、民活事業、民都事業によりアリーナ、多目的ホール等を整備し、これを、災害時に活用することを検討すべきであることが指摘された。この点については、本論の中において活用事業別にケースを設定して検討を進めている。
○防災機能はあくまで保険的なものであり、震災発生可能性と照らし合わせて考えても、際限ない投資は不可能である。一般に、費用対効果でプロジェクトの意思決定を行う現在、防災スペースを大量に用意した設計は難しい。現公共事業システムでは自治体だけで負担することは無理なので、港湾事業とのタイアップを図るのは理解できるが、それでも新規のものを作るのは未だにハードルが高い。また、会議室に関しては、国土庁の防災拠点整備の補助事業があり、5割の補助が出る上、いざとなったら避難スペースにも活用できるので、考える価値はあるという点が指摘された。
○海洋環境産業として位置づけられているデモプラントに「災害復旧活動支援の補助センター」としての役割を期待することが出来るであろうことが指摘された。