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終章 調査のまとめと今後の課題

 

1 調査結果のまとめ

第1章及び第2章で述べたように、「地方分権改革」と「措置制度から契約制度への転換」という社会福祉をめぐる二大潮流のもとで、各市町村にとっては、地域における「健康福祉資源の創造と活用」の視点から健康福祉分野の政策形成あるいは政策改良に取組むことがますます重要となってきている。とりわけ、本年4月から実施される介護保険制度のもとにおいては、要介護高齢者の身体介護サービスに焦点があてられる反面、介護予防も含めた「生活支援サービス」については保険適用外サービスとされ、その具体的なサービスの内容(メニュー)とサービス供給量については原則として各市町村の主体性と裁量に委ねられることになる。

このような流動する福祉情勢を背景として、本調査研究においては、介護保険適用外とされる在宅福祉サービスに焦点をあて、これらを行政サービスとして実施していく上での各サービス・メニューごとの課題を検討した。また、住民の利用ニーズも増大もしくは多様化・高度化しつつあるため、このうち特に、今後の自治体の取組の方向性について検討する意義が大きいと考えられる「配食」、「外出支援(移送)」、「見守り・安否確認」の三つのサービスについて、「健康福祉資源の創造と活用」という視点からサービス・システム改善のための「代替案」の検討を行った。

代替案の検討に至るまでの調査研究の基本的な流れを要約すると、以下のとおりである。

 

1] 地域特性の異なる三つのモデル地区の考察結果を踏まえて、各サービスの供給システムを構成している基本的な機能とそれを担っている地域資源(ボランティア、福祉施設、民間企業など)を把握し、供給構造の多様性を確認した。

2] 各サービスに対する住民(または利用者)ニーズの充足度を含めた現行サービス供給システムの問題点・課題を抽出し、これらの課題に対処していくための一般的な解決手段として、サービス・システムを構成する基本的機能を担い得る代替可能な地域資源の抽出を行うとともに、これらの資源を活用した具体的な事例を提示した。

3] 各サービスに対するニーズが、現行のサービス・システムではカバーしきれない領域へと拡大しているケース(多様化する外出・移動ニーズや徘徊高齢者探知・保護のニーズなど)については、ニーズ領域を類型化し整理した上で、提案・試行されているサービス・システム事例の位置づけを行った。

4] 最後に、再び地域資源としての調達可能性等に配慮しつつ、現行サービス・システム改善のための代替案、あるいは多様化するニーズに対応するための新規サービス・システム案の提示を行った。

以上のとおり、本調査研究は、三つのサービス分野に限定してではあるが、地域特性にも配慮しつつ「健康福祉資源の創造と活用」という視点からの政策の選択肢を具体的に提示し、健康福祉分野における政策選択の範囲を広げることができたと思われる。

 

 

 

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