(4) 新規システム(徘徊高齢者等の探知・保護)の概要
徘徊老人の探知・保護を目的としたシステムとしては、1]地域の多様な資源を活用・動員する「SOSネットワークシステム」と、2]先端的な情報通信システムを活用するシステム、という対照的な代替案が提案・試行されている。
ア SOSネットワークシステム
このシステムの先進事例である新潟県のシステムの流れは図表5-6に示すとおりである。このシステムの狙いは、県警をセンターとしながらも、県及び市町村の健康福祉関連部署との連携により、全県的な地域の社会資源の協力を得て、徘徊老人の早期発見を行おうとするところにある。
徘徊老人をかかえる家族は事前に保護願いを警察署に届け出る。警察は、保護することは本来の業務であるが、高齢者を保護した後に十分対応できないなどの理由から、高齢者保健福祉の担当である同県健康福祉部との連携体制をとる必要があった。また、県警と県健康福祉部が連携してはじめて、県下の全市町村及び広範な関連機関等にシステムが周知・徹底できたといえる。痴呆老人の徘徊行動は広域におよぶことが少なくないため、全県対応システムとして確立されたこと、並びに地域のコンビニエンスストアやガソリンスタンドなどさまざまな社会資源が健康福祉資源として結集され、良好な結果を得ていることは、今回調査テーマからみて、一つのモデル的な事例といえる。
新潟県のシステムは、家族が保護願いを警察署に届けることを前提としているが、家族からの届けが出されていない時点で、先に老人が保護されるケースもある。神戸市の「徘徊老人緊急保護事業」は、こうしたケースに対応するシステムとして構築された。
従来神戸市では、警察が徘徊老人を保護したものの、まだ家族等からの届けがなく本人も家族の連絡先を認識できない場合には、警察の一室に保護していた。しかし、警察の職員は老人への対応に不慣れでもあり、老人に安心感を与える対応が求められるとの判断から、市内高齢者介護支援センター4ヵ所のショートステイを活用し、72時間(3日間)以内の保護(施設入所費用は原則無料)を行うことにしたものである。
イ 情報通信システムを利用したシステム
地域の商店や人材を広範にネットする「SOSシステム」とは対照的に、GPS(全地球測位システム)などの先端技術や、携帯電話など普及率が高く単価の安い機器等を組み合わせた、さまざまなシステムが提案され、登場している。いくつかの事例の概要をまとめると、図表5-7のとおりである。
これらを大別すると、個人利用を狙ったものと自治体や福祉施設等の業務需要を狙ったものの二種類があると考えられる。
また、アで検討した「SOSシステム」と比較した場合、情報通信型のシステムは「探知機能」に優れ、「SOSシステム」は「現場確認・保護」の機能に優れている、と考えられる。したがって、両者の長所を組み合わせることも有力な代替案であろう。