エ 検討課題:行政サービス体系の見直し
これまで、高齢者や障害者などの移動制約者の外出支援サービスについて、行政サービスはごく限られた範囲を対象としてきたに過ぎない。
しかし、さまざまな局面で高齢者等の外出(移動)のニーズが顕在化しつつあり、今後はこの傾向が加速するのではないかと思われる。こうした状況を先取りして、これまで「利用者の居宅と在宅福祉サービスを提供する場所への送迎」と定義されてきた国庫補助対象サービスの範囲が、「介護予防・生きがい活動支援事業を提供する場所、医療機関などとの間の送迎」まで拡充されてきた。
こうした政策や市場等の動向を見定めるとともに、顕在化しつつある住民のニーズを整理し、地域のサービス資源の整備状況等を確認、その活用を考慮しつつ、今後の行政サービスのあり方を検討することが必要ではないかと思われる。
2 代替案の検討
(1) 代替案検討の視点
前節でみたように、現在までに自治体が福祉サービスとして実施してきた「外出支援(移送)サービス」は、ごく一部の移送(本人側からいえば移動または外出)ニーズに対応するものであり、現実には潜在的なニーズはかなり広範に存在し、これまで充足されてこなかったニーズ領域についても、行政、民間企業、ボランティア団体などさまざまな主体が対応努力を開始しつつある、というのが現状といえよう。
したがって以下では、まず視野を広くとって、多様な外出(移動)ニーズを類型化して整理し、それぞれにどのような外出支援(移送)システムが提案されつつあるかを考察する。次いで、現在行政サービスとして実施されている移送サービス(施設送迎、福祉タクシー券など)の改善方向について、新しく提案されているシステムの取り込みも視野に入れて検討する。
(2) 外出(移動)ニーズと外出支援(移送)システムの位置づけ
一般に、日常生活行動において、真っ先に何らかの支援を必要とするようになるのが「外出」という行動である。ADLのレベルが、自宅内では歩行による移動に支障のない段階であっても、一歩自宅外へ出ればさまざまな環境条件が待ち受けており、歩行やその他の交通手段の利用に際して支障が生じ易いからである。そこで、第1に、移動ニーズの類型化にあたってはまず、誰が(どのような状態の人が)移動したいのかを識別するために、高齢者のADL段階を軸に設定した。
第2に、行政サービスとしての代表的な移送サービスが「施設送迎サービス」であることからもわかるように、「移動」には「どこからどこへの移動」か、「何を目的とした移動」かなどという移動そのものの内容を決める要素がある。ここでは、このうち、最も基本的な「移動目的」を第2の軸に設定し、利用時間帯がフリーかどうかとか、個別的な移動か、合乗り的な利用かなどの要素は、サービス供給システムの特性として把握することとした。
以上の考え方に基づいて、現行の行政サービスや、新たに提案されている移送サービスの位置づけを行ったものを図表4-14に示す。