カ コスト削減を目的とした代替案
コスト削減の観点からの代替案の検討のためには、多様な部分機能システムの現状コストに関する広範なデータを収集・分析しないと的確な代替案を提示することは難しい。ただし、今回調査で把握し得た断片的なコスト関連のデータからでも、以下の点は指摘できる。
○ 一食当たり事業費でみた、3モデル地区の配食サービスコストには、かなり大きな差が認められた。その第1の要因は、調理にどの程度のコストを掛けるかという選択にある。この点は、献立企画から調理までをオリジナルに実施する大宮市・東松山市と、限定された完成食を地元の飲食店から購入する小鹿野町を対比すれば明らかであり、地元飲食店を組織的に活用する高浜市や、冷凍食を利用するプリンセスの事例もその裏付けとなる。
○ 配食サービスのトータル・コストを左右する第2の要因は配達コストである。この点は、同じボランティアを活用していても、各地区の民生委員が担当地区の利用者へ月一回配達する小鹿野町と、調理施設からいったん配送拠点にまとめて運び、そこから各地区の住民ボランティアが配達するという二段構えの大宮市・東松山市では違いがあり、さらに両市の間にもボランティアに対する「報酬額」に差がある。高浜市の飲食店の配達料金は、モデル地区のボランティア報酬よりもさらに安い。
○ コスト削減の観点からの代替システムの検討は、本来同質なシステムでの改善をめざすのか、多かれ少なかれ異質なシステム間の変更まで視野に入れて検討するのか、を分けて考える必要がある。例えば、同じ「食事」といっても、当日の調理食とレトルト食や冷凍食では、利用者にとっての「効用」にはかなりの差があろう。また、同じ調理食であっても、ボランティア、特養などの専門施設、地元の飲食店など、作り手の特性によって、単に嗜好に合うかどうかだけではない、利用者の「受け止め方」に差が生じることも大いに考えられるからである。こうした異質なシステム間の代替を検討する作業と、ボランティアの報酬条件をどう設定するかの検討とは、次元が異なるのである。
異質なシステム間(部分機能を含む)の代替案の検討は、結局のところ「コスト削減」だけを考慮すれば済むものではなく、「配食サービス」の目的や効果をどのように考えるか、という事業の根本方針に立ち返って、もともと多元的である目標(高齢者の食事機能を支援する、安否確認の機能を兼ねる、食事ニーズの増大や多様化・高度化に対応する、効率的なシステム運営を図る、地域の福祉文化の土壌を形成する、など)のどれを重視してシステムの改善・変更を図るかの選択に帰着する。困難な課題ではあるが、それでこそ、各自治体の主体性に基づく、地域特性に適合した「健康福祉資源の創造と活用」を実現することが可能となると思われる。
以上に検討した配食サービス・システムの事例(代替案を含む)について、サービス機能別に活用されている資源を整理すると、図表3-8のとおりである。なお、事例の配列に際しては、上に述べた「事業の基本目標」の視点から、「ふれあい」、「安否確認・栄養管理」、「個別ニーズ対応」の三つに区分した。