(3) 配食サービスの問題点と課題
・食事の用意ができなくなった場合、「公的な配食サービス」の利用意向が高く、行政が効率的なサービス供給システムを構築することの必要性は高い。
・家族形態や健康状態等によって利用したい「食事サービス」に違いがあるため、食事に関するサービスの選択肢を用意する必要がある。
・配食システムに限ってみた場合、モデル地区の供給システムは機能別に地域資源を活用(役割分担)した一つのモデルケースと捉えられるが、前項のような問題点と課題を内包しているため、機能別に活用できる地域資源を検討、見直すことの必要性がある。
ア 高齢者の行政サービス利用意向等
配食サービスに対するニーズをより広い視点から位置付けるために、「食事の用意ができなくなった場合の各種食事サービスの利用意向」についてみると、「公的な配食サービス」の利用意向(37.3%)が最も高く、「ホームヘルパーや家政婦による食事の用意」(20.2%)を上回っており、行政が効率的な配食サービスの供給システムを構築する必要性は高いと思われる。
家族形態別にみると、単身世帯や夫婦二人世帯で「公的な配食サービス」・「ホームヘルパーや家政婦による食事の用意」・「食材の宅配サービス」の利用意向が相対的に高い。また、健康状態別にみると、健康状態の良くない人ほど「公的な配食サービス」・「ホームヘルパーや家政婦による食事の用意」・「施設での会食サービス」が高い傾向にあり、健康状態の良い人ほど「民間による多様な配食サービス」や「食材の宅配サービス」が高い傾向にある。
「公的な配食サービス」の利用意向は高いとはいえ、家族形態や健康状態等によって利用したい「食事サービス」に違いが認められるため、「利用者の家族形態や健康状態等に併せた食事サービスのあり方」を検討し、複数の選択肢を用意することもまた必要ではないかと思われる。
イ 検討課題:モデル地区供給システムの見直し
配食サービスに限ってみると、モデル地区の供給システム(大宮市、東松山市)は、サービス機能別に地域資源を活用(役割分担)した、いわば一つのモデルケースといえよう。しかし、前項指摘のとおりいくつかの問題点・課題を内包するため、機能別に活用できる地域資源を見直してみる必要性があるのではないかと思われる。
2 代替案の検討
(1) 代替案検討の視点
現在、行政サービスとして実施されている「配食サービス」の概念を、仮に「何らかの調理済みの食事を利用者宅まで配達するサービス」と抽象的に定義したとしても、その意味するサービスの内容は明確であり、第4章で検討する「移送サービス」の内容が、定型的な「施設送迎サービス」から個人が目的地や利用時間を選択できる「福祉車両の貸し出し」まで含み、そのサービス内容を一義的に決め難いのとは、大いに事情が異なる。移送(本人からみれば移動または外出)にはさまざまなタイプのニーズがあり、同一のサービス供給システムで対応することは基本的に無理がある。