序章 調査研究の概要
本調査研究は、埼玉県を調査対象として、本来的には健康福祉資源とは別の機能・役割を担っている社会資源を健康福祉資源として活用するための方策を検討したものである。
以下、本章では、その調査研究の目的や方法、報告書の全体概要について、予め概説する。
1 調査研究の趣旨
(1) 背景
今日、健康の維持・増進や福祉に関わる住民ニーズは、高齢化の進展等にともない、量的増大のみでなく、多様化や高度化の一途をたどりつつある。こうした状況下、日常生活の場である地域社会において、住民のさまざまな生活状況やニーズにできるだけ対応し、より一層効率的な健康福祉サービスの提供を図るための前提として、種々の社会的資源の再評価や再開発を試み、活用可能な資源を豊富化するための取組が求められている。
また、現在の市町村行政は、地方分権化と社会福祉制度の改革の流れの中で、健康福祉サービスの供給力整備に関し、各市町村の主体性・裁量性を一層高める方向で対応しているが、他方、厳しい財政事情にも直面していることから、より効率的な地域経営の実施とともに、それぞれの地域特性を踏まえたトータルな福祉サービスを提供するための、より効率的な社会資源の活用を求められている。
(2) 目的
以上のような背景を受け、地方自治体は、従来から健康福祉資源として位置づけられてきた社会資源の有効活用への取組は言うまでもないが、同時に、現状では本来的に別の機能・役割を担っている社会資源を健康福祉資源として活用するための方策(健康福祉資源化策)の具体化が求められている。
そこで、本調査研究では、埼玉県を調査対象地として県内の中からモデル地区を設定し、効率的で住民生活に密着した健康福祉サービスの提供に資することを目的とし、本来的には別の機能・役割を担っている社会資源を健康福祉資源として創造あるいは活用するための方策を検討する。
(3) 意義
このような「健康福祉資源の創造と活用」という、本調査研究の取組の意義としては、在宅福祉サービスの提供体制の多様化やサービスの質向上、住民やNPO(民間非営利組織)そして民間事業者の参加の促進、地域経済の活性化、効率的な市町村経営の実現等、さまざまな観点から捉えることができる。
そこで、本調査研究においては、その意義を端的に、「健康福祉資源の多様化による社会効用の向上」と捉えている。そして、より具体的には、社会福祉分野のサービス供給基盤という観点から見れば、1]多様な主体による効率的なサービス供給、2]住民参加による地域福祉の推進、の二つの効用に集約している。