しかし、これは、補助金が関わっているという点で「自己資金ゼロで省エネ改修ができ、削減保証によって返済が可能となる」という本来のESCO事業の典型的なパターンとは異なるものである。
こうした手法でも省エネ工事は可能であるが、この場合には、初期投資費用を地方公共団体が調達しなければならず、このため、省エネ改修の内容が予算上の初期投資費用の範囲内に限定されることから、それ以上の抜本的な省エネ化を困難にさせることになる。さらに、国の補助の範囲内、しかもモデル事業として実施する場合、補助金に制約がある以上、ESCO事業を普遍的に全国の地方公共団体に普及するための手法としては限界があると言える。
ESCO事業の普及のためには、より普遍的な手法を確立することが必要であるが、本来のESCO事業を地方公共団体が導入する際には、いくつかの問題点が残されている。
1]省エネ設備の所有権の帰属の問題、2]ESCO事業として、企画・提案、本調査・設計、実施、アフターケアにいたるまでの複合的な内容を有する契約の具体的手続の問題、3]ESCO事業者へ支払う費用の費目の扱いの問題、4]業者選定に当たっての客観的な基準の設定の問題等である。
これらの問題点については、ESCO事業が、昨年9月に施行された民間資金等の活用による公共私設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)に基づく事業の1パターンとも考えられることから、PFI事業の実施に向けて議論が進められる中で整理されていくことも考えられる。
その他、具体的に手続を進めていく中で生じてくる問題点については、ESCO事業が実施できない理由を考えるよりも、むしろどのようにすれば実施できるかを考えていくことが地方公共団体等に期待されているはずである。自治省としても地方公共団体と連携しながら、これらの諸課題の解決に向けて検討を進めていくことが求められている。
今後、庁舎の省エネ改修を計画している地方公共団体においては、実行可能な手法の一つとしてESCO事業の導入についても検討を加え、地域の温暖化防止の先導役として省エネ化を進めることが望まれる。
地球温暖化問題は、地域における環境問題が地球規模の環境問題につながる典型的なものであり、地球温暖化防止のために国、地方公共団体、住民、事業者が適切な役割分担のもとに、何をなすべきかを考え、実行することは、我々が将来の世代にどのような環境を遺していくことができるか、どのような地球を引き継いでいくことができるかという問題に対する回答を示すことである。
地球温暖化対策は、未来の世代への我々の責務として着実に推進していくことが必要であり、自治省としても、より一層の支援方策について検討していくこととしている。各地方公共団体においても、それぞれの実状に応じた施策を充実することが期待されている。