ここでは、この場合に絞り対策を検討していくことにする。公用車を利用した交通行動の場合でも、温室効果ガスの発生量を抑制するための第1の対策は、交通行動そのものの削減であり、第2の対策は、徒歩、自転車、あるいは公共交通機関等、公用車より排出ガス量の少ない交通手段への転換であり、第3の対策は、同じ自動車でもより排出ガス量の少ない自動車を利用することである。そして第4の対策が、自動車を利用する時の燃料消費量を減少させること、言い換えれば、効率的な運転を行うことで、同じ距離を同じ自動車で移動した場合でも排出ガス量の抑制を可能にしようというものである。第1の対策から第3の対策までは、これまでにもいくつかの具体的提案がなされているが、第4の対策については、簡単な運転マニュアルが出されている程度で具体的な提案はない。
ここで提案する公用車への燃費計の設置は、職員が公用車を利用する場合に効率的な運転を行うことを助け、燃料消費量を節約し、結果として温室効果ガス発生量の抑制を達成することを狙ったものである。燃費計は、車内に設けたモニターに現在の運転での瞬間燃費、1回の移動あるいは一定の期間中の平均燃費、このままの運転の仕方と利用を行った時の1ヵ月間予想燃料消費量や燃料代を表示し、運転者が省燃料運転を行うことを動機付ける装置である。近年の自動車は、走行時のエンジン回転数、吸入空気量、バルブ開度、冷却水温等を各種のセンサーを用いて常時モニターしているため、これらのデータを利用することで比較的容易に燃費を計算することができ、このための装置も5万円程度で市販されている。
これまでの実験等から、燃費計を設置し、燃料消費量に注意して運転した場合と通常の運転をした場合の燃料消費量は、大都市内の一般街路で7%程度、地方都市の一般道路で20%程度節約できることが明らかにされている。一般に、一定の距離を走行した時の燃費は、走行時の気温や道路状況、空調、ステレオ等の使用状況によって変化する。また実走行時の燃費と1カタログ等に表示された特定の運転の仕方をした時の燃費とは差が存在することが多い。
こうしたことを運転者が実際の自動車の利用時に燃費計を用いて知るこで、運転者は自分に合ったより効果的な運転の仕方を見いだすことが可能となる。さらに技術開発が進み、運転者の運転特性に合わせて運転を効率的なものに制御していくことができれば、さらに燃料消費量を抑制することが期待できる。
また地方自治体が、標準的な運転をした場合と比較して燃費に注意して運転した場合の燃料消費量の節約の程度をポイント化し、これを運転者に知らせたり、さらにはこれを何らかの型で評価する制度を導入することができれば、さらに燃料消費量の抑制が期待できる。現状では燃費計の価格は、これを設置し燃費に注意して運転して節約できる燃料代では、年間走行距離が1万km以上利用する自動車でないと取り戻すことが難しい程度であるため、一般の自動車に燃費計を設置することは、現在のところ普及していない。しかし、もし公用車に燃費計を設置することになれば、燃費計に一定規模の需要が発生し、燃費計の価格が低下することが期待できると同時に燃費計そのものに対する一般の自動車利用者の認知度も高まり、公用車以外の一般車にも燃費計が普及することが予想される。
もし、こういう連鎖が動き始めれば、さらに温室効果ガスの発生量を交通行動の水準を落とすことなく抑制することが可能となる。