[6] 花粉症の有病率の地域差と危険因子解明のための疫学研究

I. はじめに
毎年春先に流行するスギ花粉症は、死亡や入院を必要とするような重症例がなく、他の疾患と比較して生命予後や重度の障害などの問題が生じることは稀である。しかし、毎年花粉の季節となるたびに症状に悩まされる人も多く、日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼしかねない。近年、アレルギー疾患への関心も高く、その発症頻度も増加しているといわれているが、スギ花粉は年次や地域によって飛散量が異なるため、全国を代表する有病率は得られていない。
スギ花粉による曝露を受けても、発症する者としない者がおり、その発症には宿主要因、環境要因などさまざまな要因が複雑に関与していると考えられる。これらの因子についても、疫学手法を用いて定量的に分析したものは少ない。
本研究は、定義された地域住民を対象に、(1)質問票から、かぜをひいていないのに出現する鼻や眼などの症状の頻度や分布を疫学的に明らかにすること、(2)スギ花粉症の有病率(地域差、性差、年齢分布)を明らかにすること、(3)スギ花粉症の危険因子を定量的に分析することを目的として実施した。
II. 研究方法
自治医科大学卒業生が勤務する保健所を全国から選定し、管内市町村で実施される3歳児健康診査受診者の両親を対象とした。