[2] 医療・福祉サービスの充実度の違う2地域における、住民のサービスに対するニーズ・満足度の調査
八森淳 青森県国民健康保険百石病院
丸山博行、倉澤剛太郎、磯嶋泰、松山淳:青森県国民健康保険百石病院
川原田恒:青森県東通村保健福祉センター
岡山雅信、梶井英治:自治医科大学地域医療学
I 背景
高齢化社会、高齢社会の到来は保健・医療・福祉の枠組みさえも大きく変え、介護保険制度導入に伴いさらに複雑になりつつある。介護保険制度はあくまで保険制度であって要介護者、要支援者が豊かに生活するためのすべての条件を整えてくれるわけではない。さらに自立した高齢者にとっては、これから豊かな生活を送る上でさらに直接的恩恵は少ないものといえる。
これから高齢社会を豊かに送るためには、包括的な考え方で高齢者が求めているものは何かを明らかにすることは重要なことと考えた。これまで、在宅ケアサービス利用の判断要因1,2、施設入所を利用者が決定する要因3など確定したサービスをどのような判断に基づいて使うかという研究はなされているが、一般的な高齢者が豊かな生活を送るために、高齢者自身がどのようなことを望んでいるかを高齢者自身の立場や視点から体系的に捉えた研究は見当たらない。本調査は高齢者自身の心の内に潜む多くの要望を質的手法も用いて体系的に捉えることを目的とし、介護保険制度の枠組みにとらわれずに包括的に考察することとした。
II 目的:
1、 サービス供給体制の異なる2つの地域のサービス需要を比較することで、サービス提供が需要の変化に及ぼす影響を検討する。また需要に及ぼす因子について検討する。
2、 インタビュー手法などを用い、高齢者が安心して生活できるために必要としていることを包括的に拾い上げ、体系化を試みる。
3、 これまでのニーズ調査で捉えられなかった、高齢者や住民の心に潜在する「こうありたい」「こうなりたい」という要望、要求を拾い上げる。この要望、要求を、本論文中では平山らが提唱している“Wants (ウオンツ)”と定義する。
II 調査内容と結果:
A 2地域の介護サービスの利用状況、周知度、需要・ニーズ調査
この調査では、サービス供給体制の異なる2つの地域のサービス需要を比較することで、サービス提供が需要の変化に及ぼす影響を検討する。また需要に及ぼす因子について検討する。
1 対象地域の概略:本研究の主な対象地域は、著者が勤務する青森県百石町である。同町は太平洋に面し、八戸市の北に位置する人口約1万人、総面積約3千km2の比較的コンパクトな町である。総世帯数は約3300世帯で、うち独居世帯約250世帯、高齢者夫婦世帯約150世帯である。